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能力主義が平等になる理由 その8

映画「アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち」は、西武ライオンズ球場で開かれたSuper Rock '84 in Japanにボンジョヴィ、ホワイトスネイク、スコーピオンズなどと並んで招待され、大観衆の前で演奏した伝説的ヘヴィメタルバンドのアンヴィル創設メンバーのふたりがスターダムに返り咲く日を信じて、働きながら音楽活動を続けるドキュメンタリー。
50代になったヴォーカル&リードギターのリップスは配食センターで働き、親友でドラムのロブは建設会社で働いている。あるときヨーロッパツアーの話が舞い込むが、スウェーデンではかつて共演した大スターと再会するが忘れられており、プラハでは道を間違え遅刻、トランシルヴァニアでは1万人の会場に観客はわずか174人、電車の乗り遅れて空港で泊まるなどトラブル続き。
メタリカのラーズ・ウルリッヒ、モーターヘッドのレミー・キルミスター、ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュらアンヴィルから影響を受けたミュージシャンがインタビューに答える豪華版だ。

「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」橘玲著によると。

”このドキュメンタリーが世界じゅうでヒットしたのは、いくつになっても夢を追いかけるという生き方にみんなが共感したからだ。
年をとって髪の毛も薄くなり、音楽は古くさく、ボーカルは音程が外れ、いまさらなにをやってもメジャーヒットなんて無理にきまっている。だったらなぜ、そんなムダなことをするのか?
リップスはいう。
もちろん、ロックが好きだから。それ以上に大事なことが、人生にあるのかい?”

好きを仕事にするということは、芽が出ないことも覚悟しなければならない。

好きなことを続けるために、リップスは配食センターの仕事をしている。衛生帽を被って、チキンの唐揚げやハンバーグを詰め込むだけの仕事は退屈で単調でしかない。リップスがロックを諦めてしまうと、他になにもないリップスは生きていくためにこの単調な仕事を一生続けるしかない。家族にしてもおなじで、リップスが諦めない限りミュージシャンの家族を演じることができる。だから、彼女たちはリップスのために一生懸命に貯金を崩してでも援助する。諦めてしまうと退屈な日々しかないことはわかっているから、諦めることは許されず、他の方法も見つからず走り続けるしかない。

この退屈な仕事はマックジョブと呼ばれて、徹底的に合理化されて誰がやっても同じレベルのものになるようになっている。高校生や大学生がアルバイトとしてマックジョブに就くのはお金のためでもあるけれど、出会いのためでもある。

そして現代は、このマックジョブに高齢者が殺到している。彼らはマックジョブで働かなければ生きていけない。夢があろうとなかろうと死んだら終わってしまうから退屈でも働かなければならないのだ。





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