5月16日
- カテゴリ:ペット/動物
- 2021/05/16 10:05:46
今日もりんごちゃんに会えた。
昨日の朝、妹にT市の大学病院獣医学部にりんごちゃんを連れて行ってもらえないか相談したら、意外にも承諾してくれた。
明日にしようかなと、つい問題を先送りする私に、早く行けと叱咤した。いろいろ問題のある妹だが、私の相談役としては優秀である。
雑種のくり子のフィラリア薬をもらうついでに、検査の予約も頼もうと、くり子を後部座席に乗せてかかりつけ医院に出発した。
だが、走り出してすぐ後部から異臭が。
ま さ か
路肩に止めて車を降り、後ろのドアを開ける。
ああ…。
座席に横たわる大きな茶色い物体。それを何の気なしに踏み荒らすくり子。
過去も同じことがあったが、またしても私の車は黄禍に見舞われたのである。
このうんこたれっ!!!と怒鳴りたい気持ちを抑えて、私は車の清掃用シートやビニール袋を総動員してうんこを片付けた。
くり子も年老いてからめっきり括約筋が緩くなったようだ。あらかじめ座席にペットシートを敷くなど、防糞対策をしなかった私の責任でもある。
あまり言いたくないが、ビタワンの大袋は糞の量がとても多くなる。安いのと無添加なのでずっと食べさせているが、ビタワンめ…と恨み節が出た。
くり子は体格はミニチュアダックスのりんごちゃんと同じくらいの小型犬雑種だが、大便の量は昔から多い。加えてビタワン効果で、大量の糞はシートベルトをはめる部品にも食い込んでいた。
やむなく家にトンボ帰りし、母を呼んで手伝ってもらう。母は割り箸を一本削って先をとがらせ、隙間に埋まった糞を器用に取り出した。さすがだ。
私も、アルコール消毒液と消臭スプレーをこれでもかと噴射して汚れを拭き取り、なんとか黄色い物体は座席から消えた。臭いもなくなった。よくある消臭スプレーだが、アルコールと合わせるとかなり効果がある。
15分かけて掃除し、手を洗って消毒してから、病院へ向かった。混合ワクチンとフィラリアの時期だから、混んでいた。時折、避妊手術のために訪れた犬や猫を見かける。
新しい家族を迎え入れたご家庭が、ちょっとうらやましい。
子供が生まれてうれしがる人は、なぜうれしいのかよくわかっていなかった。
だが、先日、子供がおいしそうにアイスクリームを食べている写真を新聞で見て、ふと気づいた。
こんなふうに、楽しいとかうれしいとか、そういう気持ちを共有する仲間ができたから、喜ぶのだと。
くり子の診察の順番が来た。診察ついでに、院長に大学病院の検査予約をお願いする。すぐにファックスを送ると言ってくれた。一応、私と妹が休みの金曜日に行きたい旨を伝えた。院長は、予定日に行けるかどうかは、後日連絡すると言った。
あとは検査を受けて、今後の治療方針を決めるだけだ…。胸のつかえが少し取れた気がした。
夜0時ごろに帰宅すると、母が寝室から出てきて私に、りんごちゃんの様子がおかしいと告げた。
トイレに行ってうんちをした後、ぐったりしてしまったという。
おなかを触ったら痛がって鳴き、やむなく自力で歩かせたものの、ふらついて、布団に来たらうつ伏せ状態で動かないと言った。
薄暗い寝室を見てみると、確かにいつもの横たわった姿ではない。うつ伏せになって、後ろ足は倒れた状態のままぴくりともせず、目を見開いたまま、ふっ、ふっと短く浅い呼吸を繰り返す。痛みを必死にこらえているのだ。
私は膝をついてりんごちゃんのおなかに手を当てた。刺すような冷たさと、じりじりした焼かれるような嫌な痛みが伝わってきた。
排便できばった時に腹部に負担がかかったのだろう。その日の朝は2回、胆汁交じりの胃液を吐いているし、消化器系がダメージを受けているのかもしれない。
翌日も仕事だから、まず風呂に入らないといけない。心配は心配だが、もう取り乱すことはしなかった。私は私の生活を生きながら、りんごちゃんに寄り添わなくてはならない。
風呂から上がると、母も心配して、りんごちゃんをなでていた。このまま寝たきりになるのだろうか。不安だが、受け入れるしかなかった。
うなることもせず浅い呼吸を繰り返すりんごちゃんのおなかに手を当てる。痛みが自分の方へ吸い取られるイメージをする。
手がしびれて重くなってくるが、ずっと当てていると、少しだがりんごちゃんが深く息をつくようになった。私の手の力ではない。状態が徐々に落ち着いてきていると信じたかった。
翌朝、6時ごろ目が覚めた。母も起きていた。りんごちゃんは変わらず浅い呼吸をしていたが、私がもう一度手を当てると、ふうっと安心したように息をついた。
それから、おなかでキュルキュルと小さな音がして、小さなおならをした。
腫瘍のせいで大腸の動きが悪いのかもしれない。
私も2か月前、急な腹痛で失神しかけ、会社の階段から落ちたことがあるが、そのくらい苦しいのだろう。
おならのおかげで腸が動いたのか、りんごちゃんは立ち上がるとよろめきながらトイレへ行った。きばると、どろどろした下痢をした。色は茶色だ。
出したらいくぶんすっきりしたらしい。
夜中のような苦し気な顔ではなく、穏やかな表情になった。まっすぐに私を見る顔がとても愛らしかった。
キャリーバッグを買っておけばよかったと後悔しながら、そっと抱きかかえて車に乗せ、病院へ。
待つ人は多かったが、すぐに診てもらえた。
院長いわく、排便できばったから腹が痛くなったとのこと。飲む鎮痛剤は肝臓に負担がかかるので出せないが、今回みたいな状態になったらその都度連れてきて、鎮痛剤注射をするとのことだった。
注射は1本1000円する。毎回連れて行くのもいろいろ大変だな…と、余計なことを考えてしまった。
注射が効いたのか、呼吸も落ち着いてきた。病院で出した下痢症状用の缶詰をぐい呑み2杯分たいらげると、りんごちゃんのベッドで今はゆっくりしている。
ひとまず安心だ。
明日もりんごちゃんに会えますように。