Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


5月22日

 今日もりんごちゃんに会えた。


 元気そうに薬入りの朝ご飯を食べたが、そのあと小刻みに震えて丸まっている。今日は雨のせいで寒いからか、病気のせいで抵抗力が落ちているからか。見守ることしかできない。


 4月の初めごろ、りんごちゃんに手ひどく噛まれたことがある。
 おやつをハンドタオルに包んで結び、それを探させる遊びをしていた。この時、いたずら心で、わざとおやつを入れず、タオルを結んで与えた。

 中に何もないのに、一生懸命タオルを嗅いでおやつを探すりんごちゃん。かわいくてひとしきり笑い、そろそろいいかと、タオルを取り上げておやつをあげようと手を伸ばした時だった。
 いきなりうなって、鼻にしわを寄せ、電光石火の勢いで左手に嚙みついたのだ。
 人差し指の付け根と第二関節に噛み傷ができ、特に付け根が深く、血が盛り上がってきた。

 これまでも、一度噛まれたことはあった。歯磨きを嫌がるりんごちゃんに歯磨きをするため、ジェルを付けた口内スポンジを口に入れようとした時だ。
 あの時もガウガウうなってきて、左手を噛まれた。傷は浅く、もうこれきりだと思っていたが、また繰り返すとは。

 すぐ傷口を洗って軟膏を付けたが、患部が紫色になり、どんどん腫れてきた。
 翌日、近場の整形外科に行ったら、破傷風になるといけないから、ワクチン注射を打つと言われた。
 「どうせ、ご飯食べてるときに手を突っ込んだんでしょ。所詮は犬畜生なんだから」この医師は口が悪かった。
 尻に2本注射を打たれながら、「犬畜生」という言葉がずっと響いていた。そこまで言わなくてもという気持ちと、犬と人間は別物なのだという事実をかみしめていた。

 そのことがきっかけで、私のりんごちゃんへの接し方や思いが、シフトチェンジしたようである。
 りんごちゃんとの心の距離が、良くも悪くも離れたと言っていい。
 りんごちゃんが病気で死に一歩ずつ近づいている今、わりと冷静に行動できているのは、りんごちゃんに噛まれたおかげと言える。

 依存しすぎてべったりだと、離れる時に死ぬほどつらい。ペットロスで精神を病まないよう、私に喝を入れた一撃だったように思える。

 何年も前、まだ小説を書いていたころ、愛犬が旅立つ時に後追い自殺する主人公の話を考えていたことがある。
 オチは、愛犬の魂にすがりつこうとした主人公に、愛犬が今までとは違う恐ろしい表情で吠え、驚いた主人公が手を放し、自分は生き残るというものである。
 まんま自分がモデルなのだが、以前の私と今の私は明らかに違う。価値観が変わったかもしれない。

 いろんなこと変化していく。今までやろうとしてできなかったことができてきたり、気になっていたことがそうならなくなったりしたことなど。
 それを成長と呼ぶならば、りんごちゃんは最後の時間を使って私に生きることを促しているのだ。
 ありがとう、りんごちゃん。明日もりんごちゃんに会えますように。
 




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