Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


万策尽きる

 6月30日、午後5時55分、私の携帯電話(ガラケー)に連絡が来ていた。

 昼間、りんごちゃんのおなかに針を刺して内容物を吸い取り、組織検査をすると担当の内科医から連絡があったので承諾していた。
 その報告だったと思うが、勤務中だったため出られず、気づいてすぐかけなおしたら、受付の自動メッセージが「本日の診察は終了しました…」とか言って通話が切れた。そのあと3回かけなおしたが、やっぱり誰も出なかった。

 嫌な予感がして、その後も仕事に身が入らなかった。休憩時間中、撮りためていたガラケー内のりんごちゃんの写真を見返していた。
 3年前のものは、ダイエットに成功してスリムになり、かわいくはつらつと写っている。それが年数を帯びるごとに、胴回りのくびれがなくなっていたが、今ほどのものではない。
 もっと私に病気の知識があって、もっと早く手を打っていれば、こんなことにはならなかったのにと後悔した。

 7月1日。早起きをし、午前9時を待って病院に連絡する。担当医が離席中だったため、かけなおしてもらう。20分後、担当医から電話が来た。

 昨日の針を刺す処置の結果、内容物は壊死した肝臓の細胞がほとんどで、感染症はあまり疑われないということだった。
 つまり、抗生剤が効かなかったのは、感染症ではなく肝臓の機能が落ちているためだったのだ。
 血を止める成分を体内で作り出す機能も弱まっているため、針を刺した所が紫色になっているという。内出血はそれほどひどくはないとのことだが、もう少し様子を見て、安全だと見たらなるべく早く家に帰すと医師が言った。
 血が止まりにくくなっているため、手術も無理と断言された。今後できることは、体内の出血をなるべく阻止するなどの対処療法になるとのことである。

 やっぱりな…。
 奇跡は起こらなかった。
 体調が改善して、手術ができて、また元気になってくれればと思っていた。神に祈りもした。
 しかし、そこに現れるぞろ目の数々。ぞろ目の連続出現は、変化が訪れることであり、別れの予兆だ。父の時もそうだったから。

 電話をしていた時は気を張って泣かないようにしていたが、今これを書いている時点で涙がボロボロ出てしまっている。
 別れという言葉は使いたくない。私が死んだら、また必ず天国で再会すると信じているから。でも、こうなってしまった原因は私にもあるし、もっと早く気づけていれば、りんごちゃんは苦しまずにすんだのだという悔しさがある。

 母に、電話が終わったあとすぐ話をした。母は、今日の夢に亡き父が出てきたと言った。最近よく現れるのだという。
 私には全然現れない。父も、余計な心配をかけさせまいとしているのだろうし、私も亡き父に心の中で「なんもなければ出てこないでな」と頼んでいたから。

 でも、りんごちゃんが父の元へ行くときは、ちゃんと夢で教えてほしい。こうして準備期間を経て、心の準備はできてきているけれど、魂で会話したいから。

 母は、くり子を連れて散歩に出た。たぶん、歩きながら泣いているだろう。




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