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芭蕉が愛した木曽義仲 その7

義仲の入京は、養和元年に起った大飢饉の影響が強く残っていた時期で西日本一帯が食糧不足に陥っていた。『方丈記』で鴨長明は「又養和のころかとよ、久しくなりてたしかにも覺えず、二年が間、世の中飢渇して、あさましきこと侍りき。或は春夏日でり、或は秋冬大風、大水などよからぬ事どもうちつゞきて、五穀ことごとくみのらず。むなしく春耕し、夏植うるいとなみありて、秋かり冬收むるぞめきはなし。これによりて、國々の民、或は地を捨てゝ堺を出で、或は家をわすれて山にすむ。さまざまの御祈はじまりて、なべてならぬ法ども行はるれども、さらにそのしるしなし。京のならひなに事につけても、みなもとは田舍をこそたのめるに、絶えてのぼるものなければ、さのみやはみさをも作りあへむ。念じわびつゝ、さまざまの寳もの、かたはしより捨つるがごとくすれども、さらに目みたつる人もなし。たまたま易ふるものは、金をかろくし、粟を重くす。乞食道の邊におほく、うれへ悲しむ聲耳にみてり。さきの年かくの如くからくして暮れぬ。明くる年は立ちなほるべきかと思ふに、あまさへえやみうちそひて、まさるやうにあとかたなし。世の人みな飢ゑ死にければ、日を經つゝきはまり行くさま、少水の魚のたとへに叶へり。はてには笠うちき、足ひきつゝみ、よろしき姿したるもの、ひたすら家ごとに乞ひありく。かくわびしれたるものどもありくかと見れば則ち斃れふしぬ。ついひぢのつら、路頭に飢ゑ死ぬるたぐひは數もしらず。取り捨つるわざもなければ、くさき香世界にみちみちて、かはり行くかたちありさま、目もあてられぬこと多かり。いはむや河原などには、馬車の行きちがふ道だにもなし。しづ、山がつも、力つきて、薪にさへともしくなりゆけば、たのむかたなき人は、みづから家をこぼちて市に出でゝこれを賣るに、一人がもち出でたるあたひ、猶一日が命をさゝふるにだに及ばずとぞ。あやしき事は、かゝる薪の中に、につき、しろがねこがねのはくなど所々につきて見ゆる木のわれあひまじれり。これを尋ぬればすべき方なきものゝ、古寺に至りて佛をぬすみ、堂の物の具をやぶりとりて、わりくだけるなりけり。濁惡の世にしも生れあひて、かゝる心うきわざをなむ見侍りし。」と都がひどい有様だったと記している。地方では種を播いてもまったく実らないことが続き、次の年には疫病も発生し、京の町は死人で溢れていた。平氏のおごりもあって、義仲は解放軍として歓迎されたのだが。

義仲軍は摂津源氏、美濃源氏、近江源氏らの混成軍であり、戦果はほとんどないが勲功を誇る源行家という厄介な叔父もおり、飢饉で食糧がないこともあって、軍紀の統制は困難を極めた。当時の武士は源氏の頭領だから忠義を誓うといった後の武士道の世界では生きておらず、損得勘定で一族郎党を生かしいかに出世するかを考えていた。

さらに、後白河法皇はじめ、京の貴族は、自分達の邪魔になっていた平氏を追い払ったら、用なしだから義仲は出ていけといった扱いだった。彼らは決して武器を持って戦わず、武士がいなくては敵を追い払うこともできないが、平氏を追い払えたのは義仲の力ではなく、天皇家の威光があってのことと考えていたので義仲に感謝することもなかった。

続く。

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2021/07/19 21:18
>ありおりはべりさん
こんばんは^^コメントありがとうございますm(__)m
日本人の多くが争い事を好まなくなったきっかけがあって、五代将軍綱吉が出した服忌令という命令です。
綱吉というと生類憐れみの令ばかりが強調されますが、江戸時代の歴史について見直しが進められて、実際の所は命を大事にする、人が亡くなったら喪に服す、忌引きで仕事を休むなど現代でも残っている風習を決めたのが綱吉であり、戦国の敵はぶっ倒すという気風から今につながる穏やかな日本人に方向転換したキーパーソンです。
今の政治は昭和の頃にやっていたものなので、その踏襲しかできない政治家たちは全員引退するべきでしょうね。そうじゃないと何も変えられないし、日本は浮上できないでしょう。
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2021/07/17 00:39
平安時代は長く長ーいので平氏の専横に至るまで何度かの飢饉を経験していますね
しかし平安時代の前は高床式住居の飛鳥時代ですから

飢饉の記録も まだ狩りが盛んな時代もちろん平安の頃もそれなりにあったでしょうが
人間の苦悩は穀物を栽培するから始まったという 元々の考え方論理もありますが

でも定住して穀物を扱う量が増えたこと 明日へのそれこそ糧としたこと
人口が増え みやこがいくつか誕生したこと 何度かの遷都があったこと
権力のだけでなく 疫病や疾病対策な面もあったようにも思えます。

穏やかな時代ではなくなり 人は増えていき またたくさん人が亡くなった時代
いまの時代に至って 日本国内で飢えで亡くなる人は可能な限り無くなった気がします。

でも それでも 今は中世の続きと思う場面がたくさんありますね

戦の原因が怨恨で戦の引き金が飢饉と領地と糧 となる 災厄に何もできない時代
地球温暖化と言われて久しい時代ですが

ここら辺は産業革命以降の問題ででもいまは中世と第二次世界大戦の延長上にある世界

日本人はすっかりではないですが 戦争がイヤという心境になるぐらいに戦争が嫌いですね
それが正常なのですが

世界は軍事オプションとか簡単に言いますし

世界全体を覆うような電子マネーの経済網が出来て 戦争すると不快的要素が増えて
ダメだと戦争をしない世界になればいいのですが

ただドローン兵器とAI兵器は脅威です。これに今の人類が呑み込まれたら
人が死なない錯覚を持った戦争をするでしょうから

自国、自軍の兵士や人員が死なない戦争をどうその時の指導者が受け取るのか
場合によっては もう サッカーの勝ち負けで戦争の勝ち負けを決めるように

AIドローンサッカーで勝敗といった ライトノベルに出てきそうな世界観になりかねないですね
まあ軍人はそんなに甘くはないですが(;^_^A

温暖化 食料危機 穀物の依存 食料自給率50%のライン など 考えると
自分の寿命のウチは勘弁してくれと思いますが

小さな小さな世論の一部と自分を思えば 炭素を生み出す文化をどう思うかなどというのは
専門家がやるとしても 一度でいいから選挙で あなたの言う通りと100%指示できるような
ことはないのかと幻想を抱いたりしています。

まあ自分の選挙区は有力な方がいて ほぼ一択なのですけどね

では~




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