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わたしたちは夢見る子どもじゃいられない その9

FICOスコアは、数学者アール・アイザックとエンジニアのビル・フェアが開発した個人のローン債務不履行リスクを計算するアルゴリズムだ。借り手の債務状況(債務負担状況と請求書の支払い記録)を精査することでリスクを計算するもので、かつて「教会、家族、職場、人種」で地方の銀行家が審査する方法より、はるかに正確にリスクが計算できるようになった。今でも多くの信用調査機関が独自の情報ソースを組み込むことでFICOスコアを運用している。

キャシー・オニール著「あなたを支配し、社会を破壊する、 AI・ビッグデータの罠」によると。FICOスコアは明確なフィードバックループが存在しており、「信販会社は、実際にどの借り手が支払いを滞らせているのか確認できる立場にある。その借り手の番号とスコアを照会することもできる。スコアの高い借り手がローンの債務不履行を起こす頻度が予測よりも高いようであれば、FICOと信用調査機関は、モデルを調整して正確度を高める」ように設定されていて、統計学がきちんとしたかたちで使用されている。

アメリカではクレジットスコアが重用されている。FICOスコアを使って計算するのが普通で、FICOのサイトにはスコアの改善方法(借金を減らす、請求書を期日までに支払い、新たなクレジットカードの発行をやめるなど)が記載されていて、自分のクレジットスコアの開示請求する権利があり、間違いがあった場合に時間はかかっても修正することもできる。

このFICOスコアで760点以上がエクセレント、725点以上がベリー・グッド、660点以上がグッドと呼ばれる。660点以上がプライム層、660点に満たなければサブプライム層と呼ばれる。サブプライムローン問題はこの信用度が低い層にローンを薦め破産に追い込んだことにある。破産したことで彼らのクレジットスコアは大きく点数を落とした。

アメリカで就職する場合、クレジットスコアが悪いと圧倒的に不利になる。アメリカの雇用主の約半数が、従業員候補の選別のためにクレジットレポートを調査している。確認のためには本人の許可が必要なので、企業はクレジットレポートの提出を求めるのだが、引き渡しを拒否するとほとんどが採用候補から外される。さらにクレジットレコードが悪ければ採用を見送られる可能性が高い。

クレジットスコアが悪くて就職できなかった場合、クレジットスコアはさらに悪化して、ますます仕事に就けなくなる。スコアが悪くなるということは坂道を転がり落ちていくようなものだ。サブプライムローンは就職できていた人たちからスコアの数字を奪って、就職できないレベルにまでたたき落とした。

さらにeスコアが登場して、ローン債務不履行リスクは代理データを使って計算されるようになった。あなたではなく「あなたに似た人」を使って何千回も計算を実行してあなたのリスクを計算するのだ。郵便番号を入力させることであなたは「あなたが住んでいる地域の人々」のデータを使って計算される。統計学の世界では代理データは全体の推測のために必要なことだが、あなたの就職のために「あなたと似た人はどんな経験をしてきましたか?」という質問をされるようなものだ。「他人は他人、自分は自分なので」就職には似た人の情報は必要ない。しかし、サブプライムローン問題で多くの貧困層が破産したため、ローンを組んでいなかった人たちまで巻き添いをくうことも出てきている。

AIを使った様々なプログラミングは、効率的に利益を最大限に上げるように組まれていて、労働者や従業員候補者の都合は考えられていない。人間をコマのように扱い、スコアが低いというだけで切り捨て、利益のためだけに稼働している。

 





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