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竹取の翁とかぐやの大事なおはなし その1

源氏物語十七帖『絵合』で、竹取物語は「まづ、物語の出で来はじめの祖なる『竹取の翁』に『宇津保の俊蔭』を合はせて争ふ。」と日本最古の物語として認識されていた。源氏物語での評価では『宇津保の俊蔭』の圧勝だったが、『竹取の翁』として物語が存在したのは間違いない。十五帖『蓬生』にも「古りにたる御厨子あけて、唐守・藐姑射の刀自・かぐや姫の物語の、絵にかきたるをぞ、時々のまさぐり物にしたまふ。」と末摘花の姫君を描き、がくや姫が当時の貴族たちに共通認識だった。

当時『竹取の翁』と呼ばれていた物語は、万葉集巻十六『竹取の翁の歌』を連想させるものだ。竹取の翁と呼ばれている80歳くらいのじいさんが、汁物を煮ている9人の天女に会う話で、不審がられるのだが逆に歌を詠もうと女性たちに持ちかけて、今は老人だが、昔は何人もの女性と浮名を流したというもので、目の前の9人の天女を口説いているともとれる。このとき、翁がうまく口説き落とした天女との子どもがかぐや姫とも、天女自身がかぐや姫ともとれる、あのときのちょい悪おやじだって感覚で貴族たちは受けとったはずだ。

竹は中に空洞をもつ植物で、当時の人々は異界に通じるものとして、忌み嫌っていた。竹取の翁という名前から、異界との繋がりも感じられる。源氏物語で「身分の低い人々」として扱われていた民だ。異界とは鬼が棲む世界であり、朝廷にさからうレジスタンスたちが巣くっているところだった。彼らは朝廷によって何もかも取り上げられて虐げられている民で、だからこそ、貴族たちは彼らを恐れていた。竹取の翁のところの竹から生まれたかぐや姫ははじめから鬼として扱われていたのだ。

「女人禁制」は鬼や神から女性を引き離すことで、鬼や神が子孫を残せないようにする施策だ。だから、幼い子どもは土俵に上がれたし、年をとっておばあさんになると「女人」ではなくなる。朝廷にとっては、鬼や神が棲む反抗的な民が多くなっては困るのだ。なにしろ、彼らは強すぎて制圧することが難しいから。鬼をもって鬼を制圧する手法を使って力を削いでいっているのに、年頃の女性を入れて子どもを作られては元も子もないのだ。

竹取物語は『公卿補任』の文武天皇5年(701年)に記されている公卿とそっくりで、全員がひどいめにあっていることから、反体制派の誰かが作者ではないかと言われている。藤原不比等がモデルだろう車持皇子が「卑怯者」として描かれていることを考えても、藤原系列ではない。とはいえ、藤原道長全盛のときに「光源氏」を主人公とした『源氏物語』が源氏に対する怨霊慰撫の物語として描かれたことを考えると、物語に関しては藤原氏は寛容だったとも言えるのだが。

つづく。

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2021/09/22 16:33
>花♪さん
こんにちは^^コメントありがとうございますm(__)m
竹取物語はいろいろな要素が詰め込まれていて、貴族たちは万葉集や古代中国からの文献と結びつけて想像して面白がっていたと思われます。
羽衣伝説は近江の天へ帰る天女と丹後のそのまま留まって零落する天女があって、日本各地どころか世界でも見られます。かぐや姫は婚姻はしないのですが、事情があって地上に留まっていて最後は天へ帰るといいう筋立てですね。
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2021/09/22 12:36
昔、宇津保物語を解りやすく書かれたものを読んだ記憶が・・
内容を完全に忘れてます;^^
竹への当時の人の考え方が解って、
ある人が竹をあまりめでたくない表現をされていた謎が解りました^^
羽衣伝説は羽衣を隠されて、結局妻になるわけですが
女性を強引に妻にするあたり
子供を作る目的、自分たちの子孫を増やすという
目的が、ロマンテックに変化したみたいに見えますね。
竹取物語の貴族に関する話は何かで読んだ覚えがありますが
どの時代も支配者への反発があるのが窺えて面白いです。

竹取の話をまとめていただいて、ありがとうございます。
知ってる部分も少しあり、それをそうだったと思い出せたり
(すぐ忘れます;;)
知らない部分は楽しく見せてもらいました。
能の羽衣は舞を見せてもらっただけで
漁師が羽衣を返してやりますが
その地上の男性の名前が白龍で、天に上る龍の名前を
わざわざつけているにが作者は羽衣伝説を
どう考えたのかなとか想像が膨らみます。
つづきがあるんですね^^
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2021/09/22 10:28
>Mt.かめさん
おはようございます^^コメントありがとうございますm(__)m
源氏物語で、紫式部は宇津保物語を今風でおもしろいって褒めてますからねー。
竹取物語、宇津保物語、源氏物語と続く流れで、当時は貴族たちをわくわくさせたのだろうなって思います。
今の出版事情だと校閲部の校正が入って、矛盾点を指摘されまくりでしょうけれどね。
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2021/09/21 17:19
宇津保物語、図書館で現代語訳を読んだことがあります。
なんだったかなーSF関連で読んだんだったか忘れたけど
かぐや姫の前駆的な物語としてこういうものがあったという
ことで大変興味深かったですねー。ちょっと物語としては長くて
まとまりに欠けるきらいはあったというのが、おぼろげに覚えてる感想(笑)




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