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防衛医官に見る日本社会のキャリア形成


前回取り上げました、自衛隊の医官に関する主な課題に関して、そのアプローチにつ
いて考えてみたいと思います。


主なポイントとしては、

1)地方の自衛隊病院や駐屯地勤務の医官の場合には、臨床が骨折などのケガか水虫
などに限られてしまい、医師としてのキャリアが伸びなくなり、早期に離職してしまいやすい。
(防衛医科大学校の卒業生は、9年以内に辞めると学費の国庫への返還義務が生じま
すが、それでも期間満了を待たずに約1/3が退官してしまいます。それが証拠に、陸上自衛隊の医官は定員が約780名に対して、5百数十名と定員割れの状態が続いています。)

2)仮に国家に貢献する仕事として、定年までいてもキャリアのゴールが限られており、報われるものが少ない。
(高級幹部となる将補以上(少将)に占める割合は6.7%と少なく、ポストも自衛隊病院の院長や陸上幕僚監部の衛生部長など限られてしまうことが挙げられます。)


主な対策として、すでに1)については取り組みが行われていますが、今後は

・著しい高齢化社会
・厳しい財政赤字
・医師不足が問題となり、増加にシフトしたもののタイムラグがある
・東アジアの軍拡など、安全保障面での脅威が広まりつつあり、組織を医療の面からバックアップするためにも、体制拡充の必要性

からも、以下の取組みが必要と考えます。


1)地域医療との連携を進めていく

・自衛隊病院の一般開放
これはすでに地方の自衛隊病院の一部が開放されており、今後は全体的な開放が計画
されていますが、積極的に進めていくべきものと考えます。
課題としては、地方の医師会との利害が絡むことと、病床を空けておく必要があり、現行では約3割の稼働率でしたが、赤字運営になっていることから、財務省がかねてより勧告を行っていたことが、実現化されるようになってきましたが、地域医療の連携としてはきわめて重要でもあります。

・医師の派遣事例の増加
当直医や勤務医などで、空いた時間などに医師不足が顕著な地方の公立病院などに支
援に行ったり、当直を行うなどがもっと増えて良いと考えております。

2)得意分野の確立
防衛医官は本来は”軍医”としての業務がありますのは、言うまでもありません。森鴎外は軍医総監として脚気の問題に取り組み、原因は栄養ではなく細菌説と間違ってはいましたが、兵士の福利厚生(いくさの前にコメを食べさせてやりたい、という情がからんでいましたが)には意識していましたことから、本来の業務としての得意分野の確立が重要と考えます。

・NBC攻撃への対処
生物化学兵器やテロなどの事例がありますことから、こうした研究が欠かせません。地下鉄サリン事件では、基本的な情報提供が大きく役立ったことから、基本的な準備は必要と認識しています。

・インフルエンザなどの感染症
集団で部隊生活を行っている・年齢が比較的若いことから、今の新型インフルエンザなど感染症に罹りやすいことは否めません。こうした研究や防疫に関する研究の余地があろうと考えます。

・メンタルヘルス
定数の削減と海外派遣が広がっていることから、隊員のうつ病や自殺など、メンタルヘルスに関する課題が広まっています。兵士の精神疾患や自殺は万国共通で、キリスト教の国家でも兵士の自殺が相次ぐため、メンタルケアの必要があるものと考えます。

ところが健康状態などを常に申告する必要があるため、精神疾患に関しては人事や処遇で不利益をこうむるのではないか、といった懸念や不安が状況をより悪化していること、精強な実力集団が精神を病むことなどありえない、といった”建前”が事態の直視を妨げている面がありますので、兵士とメンタル面のケアは日頃社会と隔絶しやすい環境で生活している以上、注視する必要があるでしょう。

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