Nicotto Town


せんちゃん


黒いピアノと黒い猫 11

訓練された犬は獲物を一撃で仕留めると聞いたことがある。

相手が人間であれば、その腕の骨を鋭い牙で砕くとも。

体の震えが止まらない。
父は僕の恐怖を感じて助けにきてくれるだろうか。

「俺は無防備だ。同志ルービン、お前が守ってくれ」

どうしよう。
父と二人で隠れられないか? この狭い小屋で?無理だ。
ガラクタをどけても物音で相手に居場所を確信させるだけだ。

雨粒が屋根を勢いよく叩く音がする。
誰かの叫び声のような風の音も。
嵐になる。
雷鳴が轟く。

突然、「…奪え!…支配しろ!」という声が鳴り響いた。
いや、声じゃない。僕の頭の中で何かが僕に命令している。

その瞬間、世界が暗転した。

雨の中、オレは全力で駆けていた。獲物を狩るために。
4本の脚で疾駆することは何と高揚することか!
教えられたニンゲンの匂いは徐々に強くなっている。もうすぐだ!
…しかし、何かが変だ。
頭の中で声が響く。
「愚かな獣よ お前の本当の獲物はあそこだ!」
「お前を酷使し、痛めつけたモノに復讐するがいい!」
「お前の主人はお前自身だ!」

そうだ、オレはオレ自身のために獲物を狩っていいのだ!

黒いシェパードは、身を翻し後ろについていた警官の腕に噛みついた!

犬と人間が雨の中泥だらけになりながら、死に物狂いで闘っている様を
僕は少し上から見世物を見るように眺めていた。

犬に命令したのは僕なのか。
それとも僕の中にいる何者かだろうか。

仲間の警官が二人、シェパードと共に駆け付けた。

腕に噛みついて離さないでいるシェパードを撃とうとするが、仲間に当たってしまうのを恐れて撃てないでいる。
腕を咬まれた警官は、なんとか左腕で握りしめたナイフで犬の頸部を切り裂いた。
犬は小さく悲鳴をあげて絶命した。

可哀そうな犬だ。

僕は他の犬たちに「殺されたくなければ自由になっていいのだ」と、心で語りかけた。

犬たちは逃げた。

豪雨の中、警官たちも僕らを追うどころではなくなったのだろう。
大怪我をした仲間とともに引き返していった。

僕は小屋の中にいる父に意識を集中した。

父は人間の姿で銃を構えながら、小屋の窓から警官たちの様子を目で追っていた。

「お父さん」
父は驚いてふりむく。

「…もう大丈夫だよ、お父さん 僕は…」
父は何も言わず、僕を強く抱きしめた。


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2023/09/29 09:11
ちくちくたん、わ~い!\(^_^)/
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2023/09/29 08:34
・・・かっこええ・・・( ̄□ ̄;)・・・
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2023/09/28 20:04
もふもふさん、次の回で詳しく説明しますがルービン自身は獣に姿を変えることはありません。
スピリットの状態で動物たちを支配し操る能力を持ちます。
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2023/09/28 19:59
ルービンは、何になったの?
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2023/09/28 19:37
次が最終回です。



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