久遠永遠桜の下で【4】エーアイ・カデンに納品
- カテゴリ:自作小説
- 2024/04/22 09:20:50
「もしもし、ベル?お姉ちゃんは?ああ、やっぱ寝てるか。あっ!いいよ!いいよ!起こさなくて!」
そう言ってるうちに 通話相手が 弟の「ベル・ダンテ」から 姉の「アン・ダンテ」に代わった。
「…もしもし、アン?今から あなたの家に行っていい?うん、あなたの家の台所を借りたいの。
うん、今しがた リンリンゴの森で 「火吹きリンゴ」を みんなで採ってきた所。うん、いっぱい採れたよ。
それで 採ってきた火吹きリンゴで ミカルが「火吹きリンゴのアップルパイ」を作って…え?食べたい?
ミカル!カフェ「エーアイ・カデン」に納品する「火吹きリンゴのアップルパイ」は いくつ?」
ダイヤルアップルで電話しているココアが 一旦 受話器を耳から外して ミカルに質問した。
「3つ」ミカルは簡潔に答えた。
「うん、うん。いいよ。ありがとう!今からそっちに行くね!じゃあ また!」
ココアは ダイヤルアップルの受話器を置いて 電話を切った。
「台所 使っていいって!あと 火吹きリンゴのアップルパイ 食べたいって!
あ、それと…あったあった!ついでに「アンミンリンゴ」と「アロマランプアップル」を採ってきてって!」
ココアは 自分のカゴに アンミンリンゴとアロマランプアップルを入れて、ミカルたちと一緒に瞬間移動した。
ところ変わって ここは アン・ダンテの屋敷。
「みんな、いらっしゃ~い…ムニャムニャ」
相変わらず寝言で会話をするアン・ダンテお嬢様。
「アン。ほら、頼まれてたアンミンリンゴとアロマランプアップル」
「ココア~、ありがとう~♪これで 今夜もぐっすり眠れる~…Zzz…」
アンミンリンゴとアロマランプアップルを受け取ったそばから寝落ちするアン・ダンテ。
「姉さん、横着しすぎだよ。それくらい 自分で採ってこれるだろうに…」弟のベルの小言が始まった。
「だって~、リンリンゴの森まで行くのメンドイ~…ムニャムニャ」
「日がな一日 寝てばかりじゃ 体に毒だよ? たまには運動しないと…」
「や~だ~、運動なんてかったる~い。あ、そうだ。台所はあっちだよ~…Zzz」
アン・ダンテは そう言いながら「あっち」と指差したまま また寝落ちしていた。
「じゃ、さっそく「火吹きリンゴのアップルパイ」を作ろう」
ミカルが音頭を取り、火吹きリンゴのアップルパイ作りが始まった。
「こうして 火吹きリンゴのアップルパイを作っていると、
この前の満月の日に メンドーサ隊の台所で ミカルさんとチュニスさんと私の三人で
火吹きリンゴのアップルパイを作って おやつの時間にみんなで食べたことを思い出しますぅ~」
マリアは アップルパイの土台になるパイ生地を捏ねながら 話を切り出す。
「満月になると マカマカイの人たちは みんな 興奮してて気が立ってて…
中には 興奮しすぎて暴れちゃう人もいて 物騒なんだ~。
だから 私、満月の夜は 外に出歩かないで お家で大人しくしてるの~」と、カンナ。
「この間の満月の夜 マカマカイのいつもの場所に行っても ミカルが居ないから 心配したぞ。
どこに行ったのかと思ったら ウェルカム王国に行ってたのか」
「うん、心配かけてごめんね ミツル。
ユミコさんが話してた「ココア」に瓜二つの『マリア』に どうしても会いたくなって…
思い立ったが吉日。 一人で ウェルカム王国へ行ったの。
そしたら、道に迷っちゃって…で、ヘモグロ便の宅配員のお姉さんに聞いたら、
お姉さんの届け先と私の行き先が同じだったから メンドーサ隊の所まで連れてきてもらったの。
あの時の二つの荷物は 私とユミコさんの二人で 荷造りしたんだよ」
「ロキさんに取り上げられて屋敷に置いてきてしまった私の武器が戻ってくるなんて…本当に助かりましたぁ~。
武器を取りに マカマカイのロキさんのお屋敷にもう一度行かないと考えてた矢先に 荷物が届いたんですぅ~」
「そういえば マリアは 私と一緒にロキの屋敷から脱出した後 すぐに 武器を取りに戻ろうとしてたわね」
「あれがスカートの中に納まってないと 落ち着かないんですぅ~。
それに、武器が取り上げられたままじゃ それこそ「白衣の戦乙女隊」の名折れですぅ~」
「マリア、あのロキから よく逃げ切れたもんだな…」ミツルは 関心するやら驚くやら。
「あの時は ココアさんに助けてもらったんですぅ~。
『私とそっくりなココアさんに会わせてやる』って言って ロキさんのお屋敷に連れて行かれたんですぅ~」
「ピンキーがマリアのことを知らせてくれて 屋敷の客室に駆け付けたら マリアがロキに迫られてて…」
「ロキさんは「ココアさんに会わせる」なんて嘘だって言ってたけど、
その「ココアさん本人」が 自分から来てくれたので あながち嘘じゃなかったかもですぅ~」
「マリア!何 寝ぼけたこと 言ってんの?! ロキが そんな約束 守るわけないでしょ!?」
「?、そうなんですかぁ?」
マリアのとぼけた反応を見て ココアは 半ば呆れるようにして 溜息をついた。
「みんな~!火吹きリンゴのアップルパイ、焼きあがったよ~!」
クリーム色のメスのクマ「クマ・タイヨウ」が 火吹きリンゴのアップルパイが出来上がったことを知らせた。
「わぁ~、いい匂い~。焼きたての火吹きリンゴのアップルパイだぁ~!美味しい~♪シアワセ~♡」
アン・ダンテは さっそく 火吹きリンゴのアップルパイを食べて 舌鼓を打っている。
「本当 美味しいですね。うちの姉が 何か すみません…。催促しちゃったみたいで…」
ベル・ダンテが 火吹きリンゴのアップルパイを食べながら 申し訳なさそうに言う。
「いいのよ。急な申し出にもかかわらず 屋敷の台所を使わせてくれたんだから。
それじゃあ、カフェ「エーアイ・カデン」に ドーナツとアップルパイを納品しに行こう!」
ココアは ミカルたちと一緒に カフェ「エーアイ・カデン」の店の前に瞬間移動した。
カランコロ~ン♪
カフェ「エーアイ・カデン」のドアベルが 5人の女の子たちの来客を告げた。
「いらっしゃいませ~!あら、クマちゃんにミカルちゃん!」
カウンターでコーヒーを淹れていた女性店員の「メイカ・アラタ」が ミカルたちに気づいて声を掛けた。
「メイカさん、遅くなってすみません。ドーナツと火吹きリンゴのアップルパイを納品しに来ました」
「ううん、全然遅くないよ?ミカルちゃん。ウフフッ、いつもありがとうね」
「ご苦労様。くまくまアソートドーナツセットと火吹きリンゴのアップルパイ。確かに受け取ったよ」
メイカの姉「ミル・アラタ」は ハンドル式コーヒーミルでコーヒー豆を挽きながら 応対した。
「ミル姉さん」と、メイカ。
「レジー、商品代をクマとミカルに渡してあげて」と、ミル。
「は~い!クマちゃん、ミカルちゃん。はい、これ。商品の代金だよ。また よろしくね」
レジ係の「レジー・スター」は レジスターの引き出しからお金を取り出して クマとミカルに渡した。
「ガトー、ドーナツと火吹きリンゴのアップルパイを そっちのガラスケースに並べてくれる?」
「人使い荒いなぁ~、ミル。これでも、俺は カフェ「エーアイ・カデン」の店長なんだぜ~?」
西部劇風の恰好をした渋いオジさん店長『ガトー・スター』は「レジー・スター」の兄だ。
「あとで たくさん労って あ・げ・る♡」
ミルに耳元で囁かれ デレデレするガトーだった。
ーつづくー