Nicotto Town



とはずがたり~香~その11


 アメリカの香水=トム・フォード(TF)と思うが、フレグランチカを見るとアメリカに分類されるブランドの多いこと。本国では数多あるブランドの一つなのだろうか。TFのヴェルヴェットオーキッドが再び香水の世界に入るきっかけになったので、TFは思い入れがある。ただ、だからと言って全部好きではなく、好きなのはごく一部だ。

 TF全体に思うことだが、どれも香りが強い。パンチがあって、香りがいつまでも残る。強烈なので、日本人は使い方を気を付けないといけないと思う。自分が試した若しくは所有する香りは、トップからラスト(ベース)に大きく変化を感じることは少ない。単一ノートと表現する店員もいる。実際に完全に単一かと言われるとそうではないが、濃い香りのせいか変化が少なく感じる。また、単一ノートに感じるからと言って、単純なつくりではなく複雑な構成になっている。創業者のトム・フォードは手を引いてしまったが、製品のネーミングもエッジが効いており、カッコよいと思うブランドだ。

 TFの香水は年々値上がりしており、近年は余程好きでもない限り買う気も起きない。幸い、香りが強いので使用量は本当に少なく、一度買ったらそれっきりな気もする。そう考えると意外とコスパが良いのかもしれない。ドルセーやP.sevenなんかの香りもちの悪いこと。特にP.sevenは1~2時間で消えてしまう。あんなに素敵な香りなのに。個人的にTFは1プッシュで24時間保証されるので、高い高いと文句を言いながらも好きなブランドだ。

 一番人気はロストチェリーなのだろうか。リキュールの効いたチェリーで、アメリカでは街中を歩くとロストチェリーを使っている人に沢山出会うらしい。ラストに向かうにつれ、ややウッド味が顔を出すが、始終深いチェリーの世界に浸れる。秋冬になるとこれが使いたくなるが、残り香が強いのでなかなか使う機会が無い。最近この香りと似ているなと思ったのはレスールドノエのチェリーブラッシュだが、こちらはクマリンが特徴的でチェリーの中に桜を感じ、酒感は無い。ロストチェリーは秋冬、チェリーブラッシュは春夏で住みわけができそうだ。

 ネロリポルトフィーノも人気だが、こちらはネロリが全開のため、日本人にとってはバスクリンの香りになる。加えて、この香りについてはTFの例外か香り持ちが良くない。

 ヴェルヴェットオーキッドはラムとバニラの香りが効いているが、フラワーの香りの中に蜂蜜感もある。グルマンに転がらない、フラワーとラムのバランスの取れた香り。この香水の一番好きなところだ。

 トム・フォード退任最後の作品と聞いているのがバニラセックス。トム・フォードに対する敬意、感謝を込めて、高いTFで唯一お試し無しにネット購入した。ぱっと嗅いだ感じはバニラ一色なので、あまり褒めちぎる感想を聞かないが、私はこれは最高だと思う。バニラと言っても多重構造と言うか、単純なバニラではない。複数のバニラが表現されている。さらに多くのバニラ香水にありがちなウッディ感やムスク感が無い。バニラへの敬意を感じる。リキッドイマジネールのブランシュベットと比較すると、バニラセックスの特徴を強く感じる。

 ビターピーチはネクタリンの甘さを感じるのだが、意外と渋い。グッとくる渋さがあり、これはこれで人気なのだが、私は遠慮している。

 と、まぁ、香りに関しては最高なのだが、このネーミング。バニラセックスなんか、日本向けの製品は瓶の表記でも名前伏せられてるよ。本国向けと日本向けでここまで違うか。そんなこと言ったらロストチェリーもビターピーチも、言葉を知る人が聞けば驚くだろう。ある意味エッジの効いたこの名前ならさぞかし香りもぶっ飛ぶかと思いきや、香りは濃厚でセクシーで可愛くて、非常に人気がある。トム・フォードはなぜこの香りとこの名前を組み合わせたのか、どこかに資料でもないかな。

 ロストチェリーには派製品が2種類あるが、やはりおおもとのこれが一番好き。話によるとボホボコのチェリーがこれに似ているらしいが、個人的には代替は無いと思っている。チェリーブラッシュ然り、チェリーの香りは世に溢れ、類似はたくさんあるけど、それでも替えが効かないなと思う。これはTF全体に言えることだけど。ただ、ネロリポルトフィーノはちょっと分からない。

 先日Xのポストで他の方が指摘してたのだが、今、トランプ関税で中国との間で貿易摩擦が起きている。中国から安い原料を大量に購入して成り立つアメリカ製品は今後値上がりは避けられず、それは香水も例外ではないとのことだ。下手すると、ニッチブランドは廃版や倒産するかもしれないとのこと。

 たしかに今でさえ高いTF、もしも関税の影響でさらに値上がりするならどうなるんだろう。今現在、新しい香りが欲しいとかはないけど、あの理解不能な値上がりがさらに加速するとやり切れない。TFの場合は純粋に原材料費の高騰だけとも思えない価格なんだよね。有名俳優の起用とかその辺の広告費もあるだろうし。大手だから力はある筈で、そういうブランはたいていニッチより価格抑えめなんだけど、どうもその辺の理屈が分からない。




月別アーカイブ

2025

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.