きみ
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/06/22 21:20:36
きみが小舟に揺られているとき
世界はどこまでも澄みわたっている
小舟がきみを運び
その小舟を川の流れが運ぶ
だから川の流れも何かに運ばれていたのだろう
でも その秘密を覗き込んではいけないよ
大切なのはどこかに向かって流れていることで
どこかにたどり着くかではないのだから
これまで流されてきた美しく幸せな流れは
過ぎていった不思議なあたたかさ
あまりに身を乗り出してもいけないよ
時の流れの外にあふれ出してしまうから
きみが小舟で揺られているとき
きみという積み荷はますます輝きを増していく
ゆっくりと流されていく小舟から
水に映った世界は静かで美しい