裏地
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/06/24 21:20:56
何かを深く諦めた
そんな夢から目覚める朝がある
思い出せない気配のようなものが
おぼろげに香って私の心をよぎっていく
眠りの部屋を出る瞬間
夢の衣装は朝の光に溶けて消えるのに
思い出のような影が去り際
ふと立ち止まってこっちを見ていた
手が届きそうで触れられない何か
最も近くまで行きながら失ったものは
深い眠りのなかに
幾度も訪れるものだろう
初恋、片思い、激しい喧嘩・・・
失ったと思ったものの懐かしい記憶が
幸せという裏地を作る
誰に見せることもなく華やかさもないが
生きることの暖かさが
私を包み込む朝だ