最期の夜月
- カテゴリ:自作小説
- 2025/07/08 16:46:04
第三十五章
「ご馳走様」と二人して食事を採り終えた後、私はカレー皿をキッチンへと持って行こうと席を立った所で、彼に…「僕が後はやっとく!美月さんお仕事の準備あるでしょ?」と何とも気の利く彼に対し、…「ありがとう、肇さん」と彼の言葉に甘えさせて貰った。私は…「それじゃあ、軽くメイクでもしてくるね」と伝えると彼は、片付け始めた食器を持ちつつ…「はぁい」とにこやかな笑顔を見せてくれた。私は寝室にあるドレッサーへと向かい、…さて、仕事だ…と「メイク」を含め仕事モードへと思考を仕事へと集中させて行く。薄めのブラウンのアイシャドウを選んだ。「仕事の一環としてのメイク」は30分程で終わり、仕事用のバッグに色々と詰め込み着替えを済ませ、リビングへと向かった。…「わぁ、美月さんのメイク姿初めて見た!」と何処か嬉しそうに言う彼の言葉に少しばかり羞恥心を覚え、…「なんか、恥ずかしいよ」と笑ってみせた。…「煙草吸ったら私仕事に向かうね?」と彼に伝えると一瞬不安気な表情を纏ったかの様に見えたが、直ぐに彼は笑顔になり…「うん」と答えていた。私はテーブルへと座り、煙草を手に持ち彼へと…「肇さん、少し話をしよう」と一緒に煙草を吸う様に促す様に彼を誘った。彼は少しばかり不安そうにテーブルへと座り、ポケットから煙草を取り出した。…「肇さん、きっと不安だよね?」 と彼へと問いかけると…「…うん、正直凄く不安…」と素直に答えていた。私は煙草を1本取り出し…「うん、ごめんね?カッターもなくて凄く不安だと思うの」と煙草へと火を点け話をする事にした。…「今迄頼るものがリスカしかなかったから…僕…どうやって美月さんの帰りを待てば良いのか分からない…」彼も同様に煙草を取り出し、大事そうなジッポで煙草を吸い始めた。ほんの少し安堵感を覚えた私は、彼を観察し始める。…「先ず、約束してほしいの「不安」を感じたら、その前でも良い必ず私に連絡して?」…「…でも…美月さんのお仕事の邪魔になっちゃう…」彼はとても「人」を優先して考えられる人なのだろう…私はそんな彼を認識し、…「私の職場は割と融通が利くのね?だから、そこは安心して連絡して欲しい」そう伝えると、彼は少し不安が取れたかの様に…「本当に?」と私へと確認を取っていた。…「うん、大丈夫だよ、だからいつでも連絡して…「不安」じゃなくても良いからどんな事でも良いよ、連絡は必ずして?」と伝えた。…「それから…」と私は話し続けた。…「もし、カッターが無くて不安で仕方なくなってしまったら買っても良いよ、でもリスカしそうになった時に、腕に手を当てて、深呼吸して欲しいの…良い?」…「うん」素直な彼だ。きっと大丈夫だと私は思い、話をし続けた。…「第一に私への「連絡」第二に自分の腕に触れて深呼吸して、これは一番大事にして欲しい事「肇さん自身」を大事にしてほしいの、大丈夫そう?」…「…うん、分かった」素直に私の話を聞き入れてくれる。…「ゆっくりで良いよ先ずは「肇さん」を一緒に大事にして行こうね?」その一連の流れで、彼は安心したのだろうか…涙を流していた。私は既に吸い終わっていた煙草を灰皿へと置き、彼を抱き締めていた。…「大丈夫、大丈夫だよ」と彼の頭を撫で、落ち着かせるように背中を摩った。…「あ…ありがと…美月さん…」と嗚咽交じりの声でそう伝えてくれる彼に対し、私は…やっぱり彼の事が好きなのかも知れない…そう感じた一瞬でもあった。彼の呼吸が落ち着く迄、彼の頭を撫でつつ背中を摩り続けた。彼は私にしがみ付きながら泣き続けていた。