最期の夜月
- カテゴリ:自作小説
- 2025/07/08 23:41:38
第三十六章
大分落ち着きを取り戻したような彼は、…「あ、ご、ごめんなさい…美月さんお仕事…」と涙を拭きながらそう言っていた。…「大丈夫よ、私の職場は割と融通が利くからね」と伝え、彼に…「そろそろ私は仕事に向かっても大丈夫そう?」と尋ねると、美しい顔で笑う「いつも」の彼がいた。…「じゃあ、後1本だけ吸っちゃお」と私も笑って彼へと伝え、テーブルへと腰掛けた。私は煙草を1本取り出し、ライターで火を点けた。…「本当に大丈夫なの?」と笑う彼に…「大丈夫だよ」と笑い返した。ぼんやりと煙草を吸っていると、…「ほんと、美月さんって優しいよね」と彼はにこやかに笑う。…「そんな事ないよ…ふふ…肇さんにだけかもね」と笑って答えた。ゆっくりと長く煙を吸い込み、細く長く煙を吐き出す。そんな空間に「肇さん」という存在がいてくれる。…幸せってこんな時間なのだろうか…私はきっと彼の事が好きなんだろう…そんな考えが巡る中、彼は…「あ、そうだ美月さんにね?お弁当作ったんだー」と楽し気に笑う彼がいた。…「え…本当?嬉しい」と私も素直になれる。…不思議な感覚だ。「美月さん、沢山食材買ってきてくれたから、折角だし…と思って僕なりのお弁当作った!」…「お弁当箱の位置良く分かったね」と笑って言う私に、「…色んな場所探しちゃった、ごめんね?」と言う彼に…「全然大丈夫よ、有難う」と答えつつ、煙草を楽しむ私が居た。そろそろ煙草を消そうと思い、…「さてと、私はそろそろ仕事行こうかな」と何とも名残惜しい時間が流れた。…「あ、じゃあこれお弁当…」と席を立った私に彼は朝から作ってくれていたであろう弁当を渡してくれた。…「有難う、お昼が楽しみ…ふふ」と彼の作ってくれた弁当を受け取り、…「それじゃあ、行ってきます!肇さんもバイト無理なくね?」…「うん、行ってらっしゃい、僕も頑張るよ!」とにこやかに送り出してくれた。私は車へと向かうべく駐車場へと向かった。…さて、仕事だ…駐車場へと着く頃自分の部屋の方を見上げるとベランダから笑顔で手を振っている肇さんがいた。…「可愛い人だなぁ」と小さく呟き私も笑顔で手を振り返した。車へと乗り込み、会社へと向かい始めた私だ。会社までは車で30分程だ。…さて、今日はやる事が沢山だ、頑張ろう…早目に在宅ワークにもして貰おう…そんな事を考えながら、会社へと車を走らせていた。30分程車を走らせ、会社へと着いた私は大きな出勤用のバッグを持ち、仕事をする為に会社へと入って行った。…「おはようございます」そんな言葉を自分のデスクへと向かう最中に何度言っただろうか…。デスクへと着いた私は上司の元へと向かった。…「おはようございます、あの…今少しお時間頂けませんか?」と上司へと伝えると…「ん?どうした?何か話したい事でもあるのか?」と問われ、…「はい…少し私情で在宅ワークにしたいのですが…」と伝えた所、…「何かあったのか?それとも会社に来るのが辛いとか、そういう事か?」…「いえ、会社に来るのには辛くは無いです…一人にしておけない人がいると言うか…」…「そうなのか、それは仕方のない事だな」と上司は言ってくれた。…「いつ頃から在宅ワークにしたいのか聞いても良いか?」…「なるべく早い方が有難いのですが…可能でしょうか?」…「そうか、なるべく早くに手配するが、…そうだな、最短でも5日位は掛かるぞ?…大丈夫そうか?」と聞いてくれる上司に…「その位でも大丈夫だと思うので宜しくお願いします」と頭を下げた。…「分かった、それじゃあ急いで手配する様にする」…「有り難うございます、宜しくお願いします」と私には簡潔に迅速に手配して貰える事がとても有難かった。…「それじゃあ、俺は上の者に言ってくるから暫く待っていてくれ」と仕事の出来る上司や理解力のある会社に感謝しつつ、…「宜しくお願いします」と伝え、デスクへと戻った。…さて、仕事をしよう…を頭を切り替え、今日の仕事内容を確認し、携帯をデスクへと置き仕事へと向き合う時間にした。