Nicotto Town



約束(ノア一族)






時が経ち、黙契が空に充満する

暗い甲板、切り裂く稲妻、吹きつける強風、荒れ狂う大海

獣たちは熱い息を吐いて僕を見詰める

暗闇のどこを刺せば血は流れるのか

曇天のどこに死は匿われているのか


船は進む 巨木のように

流木 水に浸る都市が虚ろに呟く

ワタシダ・・・ソレハワタシダ

澪に群がる水死人たちが僕を呼ぶ

無数の手が僕を招く

だが戻ることはできない

人間も動物も戻ることはできない

意思を越えた力でわれわれは導かれていく

親しみ馴染んだ細い小路を行くように


僕らはノア一族を生きるのだ

はるか彼方に過去を置き去りにし

僕と獣たちは広い水面の一点に

寂しい小さな都市を作った

あらゆるものを見殺しにしてきた穢れにまみれて

迎える朝はまもなく訪れるだろう


光が冷たいことを僕たちだけが知る

けれど僕らの顔 僕らの生に

幾重にも刻み込まれた深い溝

けれど固く口を閉ざし

ついには出帆したということも忘れ去るだろう

すべてを見渡せる眺望に出合って

僕たちに見えたものは何だったのか

鋼は萌え出よ 心の雫に濡れながら


はるかな思いが流れ出ては消えるこの地より

僕はただ薄ら寒い眠りに落ち込みながら

呟くだけだった

約束通り僕は君を訪ね

ほら、今ぼくらは笑うしかないのだ








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