君との距離
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/07/24 22:02:00
気が付くと君はいつも僕から離れているので
癇癪を起こした僕は
距離を糸のようにたぐり寄せ
それを丸めてポケットに隠してしまった
すると君が困ったように現われ
いつものように首をかしげた
しばらく見詰め合っていたが
話をしようとすると声が出ない
大声で叫んでみても口がパクパクするばかり
君は僕のポケットを指差した
僕はイタズラを見つけられた少年のように
隠した距離をしぶしぶテーブルの上に置いた
乱暴に手繰り寄せたので二人の距離は一ヶ所切れていた
君は下を向いたままそれを結び直して
『あなたが癇癪を起こして私を手繰り寄せても糸電話のように近づき過ぎては、糸がたわんであなたの声が聞こえなくなるのよ!』
僕は子供のように、『うん』とだけ頷いた
僕は駄々っ子みたいにいつでも君が目の前いて欲しかっただけなのに
あれから何年が経ったのだろうか
僕たちの距離は何箇所も切れたままだ