Nicotto Town



君との距離







気が付くと君はいつも僕から離れているので

癇癪を起こした僕は

距離を糸のようにたぐり寄せ

それを丸めてポケットに隠してしまった

すると君が困ったように現われ

いつものように首をかしげた

しばらく見詰め合っていたが

話をしようとすると声が出ない

大声で叫んでみても口がパクパクするばかり

君は僕のポケットを指差した

僕はイタズラを見つけられた少年のように

隠した距離をしぶしぶテーブルの上に置いた

乱暴に手繰り寄せたので二人の距離は一ヶ所切れていた

君は下を向いたままそれを結び直して

『あなたが癇癪を起こして私を手繰り寄せても糸電話のように近づき過ぎては、糸がたわんであなたの声が聞こえなくなるのよ!』

僕は子供のように、『うん』とだけ頷いた

僕は駄々っ子みたいにいつでも君が目の前いて欲しかっただけなのに

 

れから何年が経ったのだろうか

僕たちの距離は何箇所も切れたままだ


#日記広場:小説/詩




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