花火大会の思い出
- カテゴリ:今週のお題
- 2025/08/08 17:34:29
夕暮れの空が少しずつ藍色に染まっていく。久居陸上自衛隊基地の広い空き地には、浴衣姿の人々がゆったりと集まり、どこか懐かしい夏の匂いが漂っていた。整然と並ぶ車両の向こう、夜の帳が下りると同時に、一発目の花火が高く舞い上がる。
ドン、と胸に響く音。次々と咲く大輪は、軍靴の音も敬礼も忘れさせ、ただ空を見上げる人々の瞳をきらめかせる。消防隊員たちが、何気なく歩く姿もほほえましい。
花火の色は、まるで大人の心の奥にしまっていた少女の部分をそっと呼び覚ます。恋の始まりのように淡く、別れのように切なく、そして何よりも一瞬だからこそ美しい。
最後の一斉打ち上げが夜空を満たすと、拍手とため息が入り混じった。帰り道、耳に残るのはまだ微かに響く余韻。今夜の花火は、きっと来年まで私の中で、静かに瞬き続けるのだろう。