最期の夜月
- カテゴリ:自作小説
- 2025/08/11 00:54:38
第四十章
5日先の仕事へと取り掛かっていた頃、肇さんから連絡が来ていた。「美月さん、お疲れ様」私はすぐに携帯へと目を移し「お疲れ様、どこか良い物件あったかな?」「うん、凄く綺麗な部屋見付ける事が出来てね、僕ここが良いと思って…契約しちゃっても大丈夫かな?」「勿論、大丈夫だよ」時刻は16時45分辺りになっていた。「それじゃあ、お言葉に甘えさせて貰って…契約してくるよ」「うん、分かった」「美月さん、一人になるの怖いよ…」「後少しで帰れるから契約諸々等終わらせておいで?」「うん…ありがとう」と素直に返事をしてくれる彼がいた。「契約も時間掛かると思うから、私の帰りが先になるかな?ちゃんと帰ってくるから、ゆっくりで良いよ、それとも私も不動産屋に行こうか?」と尋ねると、「ううん、大丈夫、僕頑張るから…」と無理をしている様にも感じた私は、「やっぱり仕事終わったら、肇さんの所に行くよ」と返事をした。「…ありがとう、美月さん…僕美月さんに会いたいや…」と素直に伝えてくれる彼に対し、…何だかとても愛おしいな…と思う他なかった。「肇さん?通帳とか印鑑とか持ってる?」「あ、うん…一応一式持ってるよ」と返事をくれた。「仕事終わる迄もう少しだから、終わったらすぐそっち向かうね?場所だけ教えてて貰って良い?」と彼へと尋ねた。「分かった、今いる不動産の住所美月さんに送っておくね?」「うん、お願いね」とそんなやり取りをし、私は仕事へと戻る事にした。…5日先迄の仕事を何とか終わらせよう…そんな頭に切り替えつつある中、肇さんから不動産の住所が送られてきていた。…よし、ちゃちゃっと終わらせてしまおう…と仕事へと向かい始め、18分程で仕事を終えていた。私は、そろそろ帰らなきゃと思い帰りの支度を始めた。段々と職場の人達も帰り始めていた頃、肇さんから連絡が来ていた。「美月さん、お疲れ様お仕事終わったのかな?」と尋ねられた私は「もう帰る所だよ、不動産屋さんにこれから向かうから、少し待っててね?」と彼へと伝えた。「うん、分かった、ありがとう…美月さん」と今は恐らく不安定な彼は不安定ながらにも私に「ありがとう」とずっと伝えてくれていた。「それじゃあ、これから向かうから、30分位掛かるかな…」と彼へと伝え、「分かった、まだ僕ももう少し契約迄時間掛かりそうだから、待ってる」と返事を貰った次第だ。私は、会社の人達へと「お疲れ様でした」と声を掛け、車へと向かった。不動産は今住んでいる場所よりも2駅分程遠い場所だった。マップへと場所を入れ、エンジンを掛け…さて、向かうかな…と車を運転し始めた。…肇さん、きっと今日1日リスカしたかっただろうな…と彼へと思いを馳せる。…苦しかっただろうな…私が彼を大事にしなくちゃ…そんな事が頭を過る。そんな中あっという間に30程の運転を終え、不動産へと着いた私だ。…よし、着いた…肇さんの顔を確認したくなり、急ぎ気味でバッグやらを持ち、不動産へと入って行く事にした。