Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


運命の糸の先

第七章

…「え?」と私は戸惑いを隠すかの様に煙草へと火を点けていた。…「レン、結婚するの?」と聞き返した私に同じ様に戸惑っている様に見えた彼は、…「うん…政略結婚みたいな感じかな…」…「レンのお仕事が上手く行ってないの?」…「ううん、逆…相手の方」と小さく呟いていた。…「親にね、お世話になった人の娘さんだから助けてやれって言われて…」…「レンどうしたかったの?」と私は尋ねた。…「俺、正直アオネさんと付き合いたかった…」…「え…?そうだったの?」…「うん…」彼はすんなりと答えていた。…「ありがとう、レン」…「ううん…俺、自分に素直に生きたいよ…人の一生なんてあっという間だと思ってるからさ…」と悲し気な顔をしていた。そんな彼を見て私は両手を広げ、…「レン?おいで?」と彼へと言葉を発していた。彼は素直にそして何よりも実直に私の腕の中へと包まれ、…「アオネさん…好きです…」と彼もまた私を抱き締めてくれていた。彼が初めて私に触れてくれた時でもあった。…「私もレンが好きだよ…」そうお互いの気持ちを伝え合った夜でもある。レンは抱き締める以外の事はしなかった。私はとても嬉しかったのだ。身体も求めない、そんな彼に安心感さえ覚え、抱き締め合った儘…「レン?このまま一緒に寝ようか」と聞いてみる事にした。彼は素直に…「うん…」と抱き締め合った私達は横になる事にした。…「折角…運命の人に出逢えたと思ったのにな…」と私は本音を零していた。…「俺もそう思ってた」とまだ眠れない彼との会話が始まっていた。…「アオネさんはいつから俺の事を好きになってくれたの?」と問われた。
…「んーいつからだろ…もしかしたら最初に出逢った頃からかもしれない」私は素直に答えた。…「ははは…俺もそうかもしれないや」とお互いに最初から惹かれていた事にほんの少しばかりの戸惑いもありつつ…「そうなんだね、ありがとう」と私は答えていた。数分だろうか…話をしている間にレンはいつの間にか眠ってしまっていた。レンの顔を覗き込んだ私の目に映ったのは彼の頬には涙が伝っている事だった。
私は、彼の頬に手を伸ばし涙を拭きとった。…「辛いよね…政略結婚なんて…」レンを思うといたたまれない気持ちになってしまうのはどうする事も出来ない私の歯痒さに変って行った夜だった。

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