運命の糸の先
- カテゴリ:自作小説
- 2025/10/29 11:41:29
第八章
朝私が目を覚ますとレンの姿は無かった。…「レン…帰っちゃったのかな…」私はゆっくりと起き上がり、…少し白湯でも飲もう…そう思いながらケトルにお湯を作り始めた。その間に私は、キッチンにあった煙草に火を点ける事にした。私のお気に入りのジッポで火を点ける。ゆっくりと煙を肺の奥まで入れ込む様に吸い込み、細く長くゆっくりと吐き出した。…煙草…美味しいな…そんな事を思っていると、家のチャイムが鳴った。…誰だろう…そんな事を思いながらモニターを見るとそこにはレンが居た。私は直ぐにマイクで…「レン!どこ行ってたの?」と声を掛けると、…「あ、アオネさん?ちょっと近くのコンビニに」と少しばかり元気なさげに笑って答えていた。…「それとね、アオネさん、女性一人の部屋は危ないと思って鍵かけて俺今持ってるんだけど…入っても平気…?」と逆に聞き返されてしまった。…「そうだったの?入って入って」と彼を部屋へと促した。…「ありがと、それじゃあお邪魔します」と彼は私の部屋へと入って来ていた。彼は近くのコンビニへと食べ物を買ってきてくれた様子だった。…「アオネさんと一緒に飯食いたくて」とうっすらと悲し気に笑う彼に私は咄嗟に、…「レンが結婚しても、何らかの形で将来一緒に居られたら良いね」と思わぬ発言に自分でも驚いた次第だ。彼も面を食らったかの様に驚いた様で…「ははは…それ、良いね」と楽しそうに笑っていたのを今でも良く覚えている。…「アオネさんは何が好き?」とコンビニの袋を広げ見せてくれた。
中身はおにぎりやサンドイッチ、お菓子や飲み物まで買ってきてくれていた。…「あはは、こんなに沢山…ありがとう、レン…それじゃあ私はサンドイッチ頂こうかな」と有難く頂戴する事となった。…「飲み物は好みじゃなかった?」…「そんなんじゃないよ、今お白湯飲もうと思って」と伝えると、…「それじゃあ、アオネさんカフェオレ好き?」と聞かれ、…「うん、好きだよ」と言うと彼は…「それじゃあ、後で飲んで」と私へと手渡してくれた。…「ありがとう、それじゃあ冷蔵庫で冷やしておくね」とこれもまた、有難く頂戴した。…「ねぇ、お菓子は?どうする?」と立て続けに聞いてくる彼は何だか楽しそうに見えた。…「あはは…レン、可愛い…お菓子は一緒に食べようか」と私は彼へと笑顔で対応した。…「…っか、可愛いとかやめてよ」と照れた様に言う彼が私には愛おしかった。…「可愛いのはアオネさんだよ」と真剣な顔になった一瞬だったが、直ぐ彼は笑顔を取り戻し、…「一緒に朝ご飯食べようよ、アオネさん!」と私を誘ってくれた。今迄出逢ってきた人達とはまるで違うレンに私は少し戸惑いながらも、…「うん」と答えた。
今迄出逢って来た人達は身体を求めては朝には消えて居て、私はいつも独りになっていた。…本当に今迄の人達と違う…そんな事を思ってはレンの存在が本当に愛おしくて堪らなかった私だ。昼過ぎまでレンと食事を楽しんだり、お喋りを楽しんで過ごした。13時を過ぎた頃、レンに連絡が入り…「あ、ちょっと行かなきゃいけない」と唐突に彼は私の部屋を後にした。…「ごめんね?アオネさん…また来ちゃうかもしれないけど、良い?」…「良いよ」と答えた後…「また連絡するね!」と言っていた。
	
	

 
		




























