Nicotto Town ニコッとタウン

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終止符の煙

重い鉄扉が、この世のしがらみを噛み切る。
ゴロゴロと、魂の抜け殻がレールの上で運ばれていく。
そこに感情はない。ただの物理的な移動だ。
俺はコートの襟を立て、火をつけ損ねた煙草を弄ぶ。
ここは死を悼む場所じゃない。
未練を、摂氏千度の熱で無機質な「灰」という事実へ書き換えるための工場だ。
点火のスイッチが押される。
低い唸りを上げて、炉が目覚める。
誰かの愛、誰かの憎しみ、誰かの借金。
それらすべてが、平等なオレンジ色の光に包まれていく。
空を見上げれば、煙突から細い煙が立ち上っていた。
あいつの人生の、それが最後のサインだ。
かつ鉄火場野の数字にまみれた喧騒も、
今は都会の冬空に溶けていく、ただの淡い影にすぎない。
一時間後のトレイには、白く、脆い、カルシウムの断片。
箸で拾い上げるには、あまりに軽すぎる。
俺たちはこうして、少しずつ世界を軽くして、
生き残った者の肩にかかる重荷だけを増やしていく。
「あばよ」
喉の奥で、灰の味がした。
俺は一度も振り返らず、アスファルトの乾いた音を鳴らして歩き出した。
まだ、消すべき火種が残っている街の方へと_

#日記広場:人生




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