Nicotto Town ニコッとタウン

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最前線の幽霊

真夜中、体温計が38度を示した。
熱は嘘をつかないが、この身体も嘘をつく。
俺の血液銀行は倒産寸前だ。
白血球(やつら)はどこへ消えた?
好中球は逃げ出した。
リンパ球はストライキ中。
俺の静脈は、たった数人の老兵が守る
人影のない防衛線だ。
「さあ、来いよ」
喉の奥でくすぶる細菌(マフィア)どもに、
安物のウィスキーでうがいをしてやる。
痛い。だが、静かだ。
赤い血液の川を、
透明な幽霊がパトロールしている。
数じゃない、質だ。
そう強がってみても、指先は少し冷たい。
朝になれば、検査結果が出る。
主治医は無表情に「少ないですね」と言うだろう。
俺は帽子を深くかぶり、
熱の霧の中へ、また一人で歩き出す。
今夜も、世界は俺の体内で、
脆く、静かに闘っている。
誰にも見せられない、孤独な最前線。

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