Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



硝子の要塞

都市(からだ)の防衛網は、すでにガタがきている。
エントランスの監視員(はっけっきゅう)は、かつての半分も残っちゃいない。
あとの連中は、昨日までの激務に嫌気がさして
予告もなしにどこかの闇へ消えちまった。
赤い川の流れは相変わらずだが、
街を守る警備車両のサイレンは、もうどこからも聞こえない。
かつては無敵を誇ったこの要塞も、
今じゃ風が吹けば、窓の隙間から見えない敵が忍び込む。
「弾が足りない」と、誰かが呟いた気がした。
バーのカウンターで薄い酒を煽るように、
俺は冷えたビタミン剤を喉に放り込む。
この乾いた戦場で、俺ができることと言えば、
静かに目を閉じ、次の夜明けまで持ち堪えることだけだ。
敵は目に見えない。
埃、風、誰かの咳、そして孤独。
世界は俺の弱みに付け込もうと、
牙を研いで、路地の隅で待ち構えている。
だが、勘違いするな。
数が減ったからといって、白旗を揚げたわけじゃない。
生き残った数少ない兵士たちは、
今も奥歯を噛み締め、最後のトリガーに指をかけている。
明日、熱が上がればそれまでだ。
だが、もし陽の光を再び拝めるのなら――。
その時は、新しい酒でこの枯れた喉を潤してやるとしよう。

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