ニコ店にて中也オマージュー
- カテゴリ:ニコみせ
- 2026/04/11 08:27:12
迷い路の商店街
汚れつちまつた商店街に
けふも氷雨が降つてゐる。
看板の文字は剥げ落ちて
錆びたシャッター、ひそやかな。
一、
「雲を売る店」の軒下で
痩せた店主が欠伸(あくび)する
わたあめみたいな、はかない雲は
買つたとたんに消えてゆく
――ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
「雲を売る店」の軒下で
痩せた店主が欠伸(あくび)する
わたあめみたいな、はかない雲は
買つたとたんに消えてゆく
――ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
二、
「昨日の記憶」を商ふ店
古びた硝子(ガラス)の小瓶には
誰かが捨てた初恋や
夕焼小焼の、にほひがする。
(あゝ、あれは僕の涙だつたか)
「昨日の記憶」を商ふ店
古びた硝子(ガラス)の小瓶には
誰かが捨てた初恋や
夕焼小焼の、にほひがする。
(あゝ、あれは僕の涙だつたか)
三、
「影踏み堂」の暗がりに
動かぬ時計が並んでる
主人は影で、声も出さず
ちき、たく、ちき、たく、
ネジを巻く。
「影踏み堂」の暗がりに
動かぬ時計が並んでる
主人は影で、声も出さず
ちき、たく、ちき、たく、
ネジを巻く。
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる。
不思議な店を背に受けて
僕はひとりで帰りませう。
なすところもなく日は暮れる。
不思議な店を背に受けて
僕はひとりで帰りませう。
――ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん。
街角の幻燈
汚れた硝子(がらす)の、その向こう
そこは硝子の、魚(うお)の店。
ゆあーん ゆよーん 影が揺れ
鱗(うろこ)ばかりが、冷たく光る。
そこは硝子の、魚(うお)の店。
ゆあーん ゆよーん 影が揺れ
鱗(うろこ)ばかりが、冷たく光る。
隣はボタンの、古びた店。
誰も知らぬ、軍服のボタン。
あーあ、夜風がまた吹いて
溜息(ためいき)ひとつ、落としていった。
誰も知らぬ、軍服のボタン。
あーあ、夜風がまた吹いて
溜息(ためいき)ひとつ、落としていった。
夢の奥なる、小間物屋
硝子(びん)に入つた、過去の破片。
「誰か、買いませ」と声がする
声の主は、月光(つき)の影。
硝子(びん)に入つた、過去の破片。
「誰か、買いませ」と声がする
声の主は、月光(つき)の影。
雨が降る、雨が降る
古びた街の、その角で
不思議な商売、しているのさ
誰も知らぬ、わたしの店で。
古びた街の、その角で
不思議な商売、しているのさ
誰も知らぬ、わたしの店で。
不思議な商店街にて
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
街の端っこの 曇り日の
硝子戸(ガラスど)の中は 煤けてゐ(い)て
骨董屋(こつとうや)の主人は あくびして。
街の端っこの 曇り日の
硝子戸(ガラスど)の中は 煤けてゐ(い)て
骨董屋(こつとうや)の主人は あくびして。
一つめの店は 「ため息屋」
古ぼけた瓶(びん)が 並んでる
誰かの 去年の 後悔が
琥珀(こはく)の色して 濁つてゐる。
古ぼけた瓶(びん)が 並んでる
誰かの 去年の 後悔が
琥珀(こはく)の色して 濁つてゐる。
二つめの店は 「時計の墓場」
ネジが一本 はづ(ず)れてゐて
時間は 昨夜の 二時三分
そこから 一歩も 動きやしない。
ネジが一本 はづ(ず)れてゐて
時間は 昨夜の 二時三分
そこから 一歩も 動きやしない。
三つめの店は 「なきごゑ(え)屋」
猫のあくびや 赤ん坊
それから 死んだ あの人の
かすかな 鼻歌 売つてゐる。
猫のあくびや 赤ん坊
それから 死んだ あの人の
かすかな 鼻歌 売つてゐる。
汚れつちまつた 僕の手に
似合ふ(う)品物 ありはせぬ
トテチテ トテチテ 日が暮れて
街燈(ガスたう)ばかりが またたくよ。
似合ふ(う)品物 ありはせぬ
トテチテ トテチテ 日が暮れて
街燈(ガスたう)ばかりが またたくよ。
ああ 不思議な 商店街
誰も 買はない ものばかり
僕も 自分の 寂しさを
棚の隅っこに 置いてきた。
誰も 買はない ものばかり
僕も 自分の 寂しさを
棚の隅っこに 置いてきた。
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん。
いつもありがとう_皆様お邪魔しております_

























