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悲しみのDeep River3

真夜中のダイナー。
冷めきったコーヒーの表面に、
安っぽいネオンが毒々しく揺れている。
俺の向かい側には、座るはずのない影。
「Deep River(深い河)か……」
誰かがジュークボックスに投げた硬貨が、
古ぼけたブルースを呼び覚ます。
低く這うベースの音は、
都会の地下を流れる汚濁した川の底を叩くようだ。
悲しみってやつは、
バーボンのショットグラスに似ている。
一気に飲み干せば喉を焼くが、
胸の奥に溜まった澱(おり)までは流しちゃくれない。
河の流れは、すべてを海へ運ぶという。
だが、俺たちの罪や、
あの夜に失くした約束や、
消えちまった女の香水の匂いは、
この深い河の底で石のように沈んだままだ。
窓の外、雨が降り始めた。
アスファルトを叩く雫が、
逃げ場のない男たちの足跡を消していく。
俺はコートの襟を立て、
勘定をテーブルに残して席を立つ。
背後で止まらないブルースが囁く。
「お前もまた、この河の一部に過ぎない」と。
夜はまだ、深い。
Deep River。
この悲しみを飲み込むには、
あいにく、この河は深すぎた。

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