Nicotto Town ニコッとタウン

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雨の指先


青いあじさいの毬(まり)のなかに
いつからか しずかに眠っていたのは
だれが落とした ため息だったろう
窓をたたくのは 銀の、細い、雨の指先
五月がのこしていった あかるい風のうつわを
にわか雨が ひそやかに満たしてゆく
ぼくの部屋の 古びた机のうえ
ひらかれたままのノートは 白く、にじむばかり
消えかけた記憶の 淡いパステルのように
薄みどりの梢(こずえ)が ぬれた空に溶けて
どこかで小鳥が 小さく啼(な)いた
失われたものは もう呼び戻せなくて
六月の憂鬱は やさしい歌のふりをして
ぼくの心に そっと傘をひろげる

#日記広場:小説/詩




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