Nicotto Town ニコッとタウン

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静かな夜の五線譜

低音の鍵盤が、ぽつり、ぽつりと、夜の深さを刻むように鳴る。
それはまるで、暗い水面に落ちる雨のしずくのようだ。
右手がそっと、高い音を拾い上げる。
かすかで、消え入りそうな、ひとつの旋律。
ペダルを踏み込んだままの、長い残響が、部屋のなかに白い霧のように広がっていく。
激しい和音はない。
ただ、音と音の間にある「沈黙」が、何よりも雄弁に語りかけている。
ひとつの音が消え、次の音が生まれるまでの、あの息をのむような静けさ。
それは、かつて失った大切なものを思い出すような、
あるいは、誰もいない草原で風の音を聴いているような、
優しくて、少しだけ冷たい調べ。
最後の和音。
鍵盤から指が離れても、かすかな余韻が空気の中で震えている。
やがて、その響きも完全に夜の闇に溶けて、
部屋には本物の、美しい静寂だけが取り残される。_

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