Nicotto Town ニコッとタウン

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眩景のなかに


 

その一
はるに近い あかるい夏日の夕暮れ
なみは 無数の宝石のやうにひかる
まぶしすぎる光の つめたい海のうえに
一本のけむりが 白くのびている
ゆくえを忘れた鳥が 一羽だけ
きらめく波のまにまに 消えさらうとしている
さびしい心は なにもいはずに
ただ あおい風のゆくすえを追ふ
そこへ ひと声の汽笛がひびいた
光をひき裂くやうな 高いいろのひびきだつた
むかしこぼれおちた すべての時間が
ひかりのなかに よみがへる
汽笛は鳴る わたしの耳のそばで
けれど もうなにも戻らない
その二
夕日は しづかに海の底へ沈み
宝石のやうな波も やがてあたたかい影に包まれる
心も あのあかるい闇のやうに
しづかに 頽(くず)れてゆくだらうか
窓をひらけば なまぬるい海のにおひ
遠い汽笛は まだ鳴りやまない
すぎていつた季節(とき)の
わすれられた なきがらのやうに
わたしは 待つている
もうだれも こない夜の波止場で
ひかる波の記憶だけが 暗闇にのこるのをみつめながら
汽笛は鳴る かすかな余韻をのこして
心に 夜がそつとおりてくる
すべては 二度と目覚めぬ夢のやうに

#日記広場:小説/詩




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