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ノートルダムの白夜――霧と石の独白


重く、暗い、凍てつくような夜霧だ。セーヌの川面は黒い鉛のようで、ノートルダムの巨大な影は、まるで人間の罪そのものを告発する巨大な墓碑のようにそびえ立っている。
外套のポケットの中で、俺の指先は凍えている。神は沈黙し、世界はあまりにも広大で、そしてあまりにも冷酷だ。この霧のなかでは、大公も、浮浪者も、そして過去に魂を切り売りしたこの俺も、等しく無価値な一個の肉塊にすぎない。

罪と霧の大聖堂  独り
ペテルブルグの湿気た夜が、このパリまで追ってきたのだろうか。
否、これは俺自身の魂が吐き出した、絶望という名の霧だ。
ノートルダムの黒い尖塔が、
見えない神の指先のように天を指している。
だが、その天からは何の救いも降ってこない。
ただ、冷徹な理性が、俺の胸を容赦なく抉るだけだ。
「人間は、自らの苦悩を愛している」
かつて誰かがそう言った。
ならば俺がこの孤独に凍えているのも、
己の罪を噛み締めるための、歪んだ快楽なのか。
肺の奥まで吸い込んだ冷たい霧は、
まるで鋭い剃刀のように、俺の良心を切り刻む。
誰もいない。誰も俺を裁かない。
それこそが、この世界における最大の罰だ。
生きていくことは、永劫の苦役か。
それとも、この霧のなかで、
ただ一歩、泥濘(ぬかるみ)へ踏み出すだけの喜劇か。
俺はただ、神のいない聖堂の前に立ち尽くしている。

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