生まれつきの美貌
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/07/01 20:10:48
鏡をのぞけば、そこに居るのは
見知らぬ他人のような、恐ろしいまでの美(み)づら。
それは神の悪戯か、それとも母の胎内で受けた
ひとつの赦されぬ呪いであったか。
見知らぬ他人のような、恐ろしいまでの美(み)づら。
それは神の悪戯か、それとも母の胎内で受けた
ひとつの赦されぬ呪いであったか。
誰もが私を振り返る。
街のカフェテラスで、吹き抜ける風のなかで、
その視線は私の肩にとまり、肌をなで、
やがて私の胸の奥にある、小さな暗い空洞をあばき立てる。
街のカフェテラスで、吹き抜ける風のなかで、
その視線は私の肩にとまり、肌をなで、
やがて私の胸の奥にある、小さな暗い空洞をあばき立てる。
私はなにもしていない。
ただ息をし、ただ所在なげに立っているだけだというのに、
その整いすぎた鼻梁(びりょう)も、濡れたような唇も、
すべてが誰かを傷つけるための凶器になってしまう。
ただ息をし、ただ所在なげに立っているだけだというのに、
その整いすぎた鼻梁(びりょう)も、濡れたような唇も、
すべてが誰かを傷つけるための凶器になってしまう。
ああ、美しいということは、こんなにもみじめなものか。
着古したシャツを着ていても、路傍の石ころに腰掛けていても、
私の姿はまるで、豪華な額縁に無理やり押し込められた
血まみれのピエロのように、周囲から浮き上がってしまう。
着古したシャツを着ていても、路傍の石ころに腰掛けていても、
私の姿はまるで、豪華な額縁に無理やり押し込められた
血まみれのピエロのように、周囲から浮き上がってしまう。
私はただ、泥水のように濁った幸福を欲していただけなのに。
凡庸な、誰の目にも留まらない、あたたかな日溜まりのなかで
息をひそめて消えてゆくことを、あんなにも夢見ていたのに。
凡庸な、誰の目にも留まらない、あたたかな日溜まりのなかで
息をひそめて消えてゆくことを、あんなにも夢見ていたのに。
神よ、なぜ私にこんな顔を与えたのですか。
この顔は、私の魂を容れるにはあまりにも立派すぎて、
私は生涯、この美しい仮面の中で、
息も絶え絶えに、ひっそりと窒息死を待っているのだ。
この顔は、私の魂を容れるにはあまりにも立派すぎて、
私は生涯、この美しい仮面の中で、
息も絶え絶えに、ひっそりと窒息死を待っているのだ。
もしも明日、この世のすべてが灰になってしまうなら。
私は真っ先に、この忌まわしい貌を
誰にも見られない深海へ投げ捨てて、
ただの名もなき、哀れな獣として眠りたい。
私は真っ先に、この忌まわしい貌を
誰にも見られない深海へ投げ捨てて、
ただの名もなき、哀れな獣として眠りたい。


























