Nicotto Town ニコッとタウン

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遠い昔 処暑に寄せて


ひぐらしの声が 夕闇の底へ沈み
あれほど熾(さか)んだった熱い陽ざしは
いつのまにか 木漏れ日のやはらかさになって
ぼくたちの足もとを そっと濡らす
風はもう 遠い海の話をしない
どこか見知らぬ尾根を越えてきたやうに
冷ややかな手ざわりで きみの髪を撫で
過ぎ去った季節の宛名を さがしてゐる
まだ夏の名残をのこす ひるさがりの
ちひさな窓辺に ぼくたちは腰かけて
かすかに動くカーテンのゆくへを 見てゐる
もうすぐ すべての光が透きとおり
告げられなかった言葉だけが
記憶のなかに 静かに遺されるだらう

#日記広場:小説/詩




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