Nicotto Town ニコッとタウン

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午前二時の、歪んだステップ


真夏の月は、やけに厳格な輪郭で
ベランダのプラスチック椅子を照らしつけている。
冷えた缶ビールを額に当てても、
容赦ない熱気は、脳の芯までふやけさせる。
今日やると決めていたことの半分も、
この茹だるような暗闇のなかに消えていった。
「確かなことなど、何ひとつない」
誰かのセリフを気取ってみるが、
一番確かじゃないのは、他ならぬ俺の記憶だ。
数時間前の決意さえ、
氷の溶けたグラスの底へ、あっけなく沈んでいく。
他人の嘘を暴くのは、さして難しくない。
だが、自分という最大の嘘つきを、
どうやって追い詰めればいいのだろう。
約束を忘れ、時間をはぐらかし、
自分さえ当てにならない、この決定的な適当さ。
タキシードを裏返しに着たような、滑稽で、苦い孤独。
ぬるい風が、カーテンを頼りなく揺らした。
見上げる空、あの月だけが、
狂いのない軌道で夜を渡っていく。
置いていかれた俺は、ただの迷子だ。
まあ、それも悪くない。
俺はブーツの踵を鳴らし、
答えの出ない夜の街へ、もう一歩だけ踏み出した。

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