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真夏の陽炎


草のうえには あかるい真昼のしづけさが満ち
だれもゐない径(みち)を 光だけが歩いてゐる
風はどこかで 微睡(まどろ)む梢にわすれられ
青い空のすそを ひそかに揺らしてゐるのだった
あすこに見えるのは 揺らめく水のまぼろし
ゆきすぎる季節の うすいリボンのやうに
ひとつの名前が 白く燃えつきては
かすかな記憶の底へ ほどけて消える
あなたはそこに たたずんでゐるのだらうか
もう届かない はるかな九月の窓から
僕をみつめて 優しくほほゑむだらうか
陽炎はただ あをじろい夢のやうに立ちのぼり
追ひかける僕の指先を すりぬけてゆく
すべては真夏の ひかりのなかの出来事だった

#日記広場:小説/詩




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