Nicotto Town ニコッとタウン

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のちの想ひに


あんなに雪が降つてゐた 北へ向かう夜に
私はただ ひとつの失つた名前をよんでゐた
狭い二段寝台の あかりを消した暗闇で
切なさは すきま風のやうに胸をぬけてゆく
いまはもう消えてしまつた あの汽車の青いカーテン
誰もいない通路の かすかな白熱灯のひかり
すべては昭和の 遠い幻だつたのだらうか
私の涙のやうに 窓の雪は溶けて流れてゐた
明日の朝のひかりが 灰色の空をひらくとき
私は見知らぬ終着駅へ たどりつくだらう
そこにはただ 冷たい風が吹いてゐるばかり
失はれた季節の 激しい雪のふりしきるなか
私は独り あのガタゴトと鳴る車輪のひびきを
いまも心の底で やさしく聴きつづけてゐる

#日記広場:自作小説




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