季節外れの宿にて
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/08/19 10:21:14
季節のすぎてしまった温泉地の
古びた宿の だれもゐない廊下
夜の闇は おどろくほどに深く
私の足音だけが ひそやかに消えてゆく
古びた宿の だれもゐない廊下
夜の闇は おどろくほどに深く
私の足音だけが ひそやかに消えてゆく
昼のざわめきは もうどこにもない
古びた障子の隙間から
あのかすかな硫黄の匂ひと
冷たい夜気(やき)が そつと忍び込んでくる
古びた障子の隙間から
あのかすかな硫黄の匂ひと
冷たい夜気(やき)が そつと忍び込んでくる
窓の外には ただ一箇(ひとつ)の夕月と
またたくことを忘れたやうな 微かな星
私はこの深い闇の底で
完璧な独りであることに 深く息をつく
またたくことを忘れたやうな 微かな星
私はこの深い闇の底で
完璧な独りであることに 深く息をつく
おゝ 失はれた時間のやうなこの部屋で
寂しさは 私を優しく育む毛布のやうだ
だれも来ない だれも呼ばない
この静けさだけで 私はあんなに充たされてゐた
寂しさは 私を優しく育む毛布のやうだ
だれも来ない だれも呼ばない
この静けさだけで 私はあんなに充たされてゐた

























