Nicotto Town ニコッとタウン

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確かな光のなかに


私たちは並んで あの夕月を見上げてゐた
季節外れの 寂れた宿の窓辺辺(まどべ)から
かすかな硫黄の匂ひと 微かな星のまたたき
おまえの横顔は その光のなかに確かにあつた
大勢のなかにゐても 私たちは独りだつた
けれどその孤独は 少しも寂しくはなかつた
おまえの息づかいが 夜の闇の深さに溶けて
二人の沈黙を 優しく充たしてゐたから
いまはもう だれもゐない古い部屋
私はひとりで あのときと同じ月を仰いでゐる
おまえの姿は もうどこにも見当たらないけれど
あの日交わした みじかい言葉のあたたかさは
この深い闇の底で いまも私を支へてゐる
美しい夕月よ どうかあの人へも届いておくれ

#日記広場:小説/詩




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