再読「ノルウェイの森」
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/01/03 00:07:40
「ノルウェイの森」を読んでます。
昨日までは「海辺のカフカ」を読んでました。
村上春樹著。どちらの小説も再読。
「ノルウェイの森」においてはすでに10回以上は読んでいる本です。
村上春樹の本は定期的に読み返します。
永遠の一番は「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」
これもそのうち再読してみようと思います。
今回「海辺のカフカ」と「ノルウェイの森」を続けて読んでみて、
共通点がありました。
物語のヒロインは死に向かって生きています。どちらも自殺ですが
それはもうあらかじめ決まっている死です。
ヒロインたちは「自分を愛する男性」に対して同じセリフを言います。
「私のことを忘れないで。」
そのセリフの中には(あなたは私のいない世界で生き続けて、
私が生きていたということを忘れないで)という意味がこめられています。
ここでいう男性(どちらも物語の主人公「僕」)は、彼女のことをすごく
愛していますから、彼女無しの人生なんて考えられません。
だけど、彼女は「僕」を残し、一人で逝く道を選びます。
そこにはいろんな葛藤があり、苦悩があるのだけれど
愛するもののいない世界で生きることを強いられた「僕」という
存在があるということが彼女たちにとっては重要なことだったんだろうと
思います。肉体が滅ぶのが死ではなく、人は、人の心の中から
失われた時に、本当の死をむかえるのかもしれません。
以下「ノルウェイの森」より抜粋。
‥…━━ *‥…━━ * ‥…━━ * ‥…━━ * ‥…━━ *
もっと昔、僕がまだ若く、その記憶がずっと鮮明だったころ
僕は直子について書いてみようと試みたことが何度かある。
でもそのときは1行たりとも書くことができなかった。
その最初の1行さえ出てくれば、あとは何もかもすらすらと
書いてしまえるだろうということはよくわかっていたのだけれど
その1行がどうしても出てこなかったのだ。全てがあまりにも
くっきりとしすぎていて、どこから手をつければいいのかが
分からなかったのだ。あまりにも克明な地図が、克明にすぎて
時として役に立たないのと同じことだ。
でも今はわかる。結局のところ・・・と僕は思う
文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶
や不完全な想いでしかないのだ。そして直子に関する記憶が
僕の中で薄らいでいけばいくほど僕はより深く彼女を理解する
ことができるようになったと思う。なぜ彼女が僕に向かって
「私を忘れないで」と頼んだのか、その理由も今の僕にはわかる。
もちろん直子は知っていたのだ。僕の中で彼女に関する記憶が
いつか薄らいでいくであろうということを。だからこそ彼女は僕に
向って訴えかけねばならなかったのだ。
「私のことをいつまでも忘れないで。私が存在していたことを
覚えていて」と。
そう考えると僕はたまらなく哀しい。何故なら直子は僕のことを
愛してさえいなかったからだ。
‥…━━ *‥…━━ * ‥…━━ * ‥…━━ * ‥…━━ *
文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶
や不完全な想いでしかないのだ。
この文章の意味はあたしにも分かります。なんとなくだけど。
ココロが痛かった日
公園のブランコにいつまでも座って
家に帰れず泣いてた日
そんな日の記憶はいつまでも忘れない
その時の風の匂いや、冷たさは忘れることが無い
だけど、そんな日に限ってただの1行も日記に書けなかった
想いを均(なら)して、一度心の奥そこへ沈めてあげて
そしてゆっくり浮かび上がってきたものをそっと取り出してみると
意外とそこに含まれる真実のようなものは見えてくる
近すぎて見えなかったものが、遠くからだと見えてくるように
そしてきっとまだその時間の途中にいる
係わって来た人や、自分の想いもあるだろう
風化しきれずにくすぶっている感情もまた・・
そういう意味では
あたしも、あなたも流れの途中
あと、つい最近ゼムクリップを見たときに、「世界の終わりと~」があたまをよぎりました
よわい自分を見つめなおしてしまいます
その時間のなかで、思い出は美化されていくのだ。
だから失った恋でさえ、懐かしく思えるのだろう。
写真や映像とはちがう、人の記憶。
人の記憶に生き続けることが、もっとも難しく、
もっとも幸せなことなんだろうなぁ。
文章は全く違うけど、ついこないだも同じニュアンスのこと書いてたよなぁ。
いつか書ける日がくるといいな^^
文章にして表現することに、何か器に
自分の気持ちを納めてしまうようで
すごく抵抗を感じたことがありますね。
伝えきれない部分というか溢れている部分を表現しようとすると
単純に何度も連呼するしか表現のしようがなかったり・・・・
明確な迷いの無い思いというのは、言葉や文章で表すと薄っぺらになってしまう。
だからあえて人間は愛し合う時は、無性に相手を貪るんですよ
この作品の抜粋部分だけを見ると
ヒロインは、僕に自分の存在を覚えていて欲しいのではなく
僕=多数 数はどうでもいいのだがとにかく誰かに自分の存在を
他人の心に焼き付けたかっただけ・・・・
その手法として自殺を選んだ
虚しいことです。
同じく村上春樹の世界を読み返しては楽しんでいます。
「スプートニクの恋人」も好きかな・・・・。
想いをそのままに伝えたいのだけれど、それに代わる言葉が出てこない。
そういうジレンマと日々闘っているわけです。
抜粋した文章読んだら、面白そうだw
こはるの言ってる事は、それを読んだ後にわかるのかな。
なかでも「世界の終わりと~」が一番好き。
新刊が出る日が待ち遠しいナ