Nicotto Town



友達以上恋人未満…?(若干BL味あり)



「村山ぁ……」

 情けない声で俺の名を呼ぶ杉谷。最近こいつ、頑張ってたからなぁ……随分とお疲れのようだ。
スマホの画面をスクロールしながら、俺の隣へとやってきた男の頭に手を置いてわしゃわしゃと頭を撫でる。
こうやって俺に頼るのは珍しい。杉谷は相当参ってる時にしか甘えてこない。俺としてはいつでも甘えてきてくれて全然いいんだけど。

「……どう?俺の手。」
「んん?……んー……なんか、村山って感じ。」
「なにそれ。」
「んー、んふふ、……ありがとね。」

 お礼を言われた。……もう、俺のそばから離れようとしてんな。お前の思考は見え見えだぜ。
どうせならぎゅって抱きついた方がいいのかな。……嫌がられるかも。やめとこ。
スマホから目を離して、杉谷の方を向く。お礼を言われたらきちっと返さないと。スマホ見たまんまじゃ失礼でしょ。

「どーいたしまして。」
「お陰様でフルチャージ出来た。」
「嘘つけ。もっと充電してけ。まだ入るだろ?」
「まだ入るって……なんか、卑猥……」
「杉谷さーん、そういうのいいから。卑猥とか言わなくていいから。……うん、言わなくていいから。」
「なんで二回言った。」
「大事なことなので……ってやつだよ。ほら、大人しく座っとけ。」
「へーい……」

 杉谷は申し訳なさそうな顔をしながらも、少し嬉しさが表情から滲み出ている。ほら、やっぱり。もうちょっと甘やかして欲しかったんだ。これを見抜けた俺の勝ち。
今度は両手で、杉谷の頭をよしよーしってしてると、なんだか犬を撫でている気分になってきた。……あんまり犬撫でたことないけど。
杉谷の顔はなんか幸せそう。にへらって感じで笑ってる……?ニヤけてる……?なんか、そんな感じ。とにかく幸せそう。
杉谷が幸せそうだと俺も幸せ。杉谷を甘やかせられてとても満足。嫌がられるかなとかどうでも良くなって、思わずギュッ、て抱きしめた。

「へっ、むら、村山!?」
「んー、嫌?嫌なら嫌って言って。」
「い、嫌じゃない……けど……」
「けど?」
「かなり、恥ずかしいといいますか……」
「……杉谷のくせに、変なとこで恥ずかしがるのほんとなんなの?」

 たまに下ネタ製造マシーンと化すことのあるこいつは抱きしめるだけで恥ずかしがるらしい。新発見。なんだか嬉しい。

「悪いかコノヤロー!俺の腕は今行き場を失ってるんだ!」
「知るかそんなん。俺の背中に回せばいいでしょ。」
「まっ、そっ……れが無理なんだよ!いいか!俺の腕が村山に触れることによって!俺は死ぬ!」
「なーにわけのわからんこと言ってんの。死にはせん。さっさと腕を回せ。」
「村山は俺が死んでもいいっていうのか!村山の薄情者!」
「だぁから、死なないっつってんでしょーが。杉谷が腕を回さない限り俺はお前に抱きつくのをやめない。」
「なぬっ!?……くっ……仕方ねぇ……自爆するしか……!」
「っふふ……ポプ○ピネタやめなさい。……もー、わかったから。今日のところはここまでにしといてやるよ。」

 杉谷の唐突なボケによって笑わされた俺は、意地でも背中に腕を回さない杉谷によくある雑魚敵が撤退する時のセリフを言って離れる。
離れて杉谷の表情を見てみると、ポカン。としたような顔をしていた。
……ふーん、なるほどね……

「俺が離れるって思ってなかったわけだ。」
「へっ……ちっ、ちが、……いや、違くはない……けど……」
「まだまだ充電は足りないようだ……満足するまで抱き潰してあげるわ。」
「エッ、いや、……抱き潰すって……」
「はーいそこまで。」

 何かを言いかけた杉谷の言葉を遮り、ほれ、と腕を広げる。自分から抱きついた方がやりやすい……気がする。
俺の行動に、ほぇっ、っと変な声を出してキョドるも、おずおずと俺に抱きつく杉谷。俺って天才なのでは。あんなに嫌々言ってた杉谷が一瞬で……
杉谷から来てくれた嬉しさを噛み締めながら、ぎゅうっ、と抱き返す。

「ほら、触れても死なない。」
「ぬぐぅ……村山のばか……」
「へいへい、馬鹿で結構。」
「イケメンが!イケメンだからって何しても許されると思うなよ!村山なら許すけど!」
「俺なら許すのかよ。あとなんで俺はキレられてるわけ。」
「……村山がイケメンだから。」
「何それ。まぁ、あんがとね。」
「ほら!そゆとこ!イケメンが!」
「はいはい、騒がなーい。杉谷さん近所迷惑ですよ。」
「あらやだ。ごめんなさいねぇ。」
「ふふっ……びっくりするほどの切り替えの速さ……」
「フッ……」
「そこドヤるとこじゃないからね?」

 どうでもいいような話。これが平和ってやつか……こんな日がずっと続くといいな……ってのはきっとフラグだから言わないでおこう。
こういうのが、幸せって言うんだろうな。……幸せって、声に出した方がいいのか?……わからんな……まぁ、幸せって声に出して言うに越したことはない。

「……杉谷ぃ。」
「んんー?」
「俺ね、幸せ。」
「そっかぁ……俺も、幸せ。」

 もう、フラグでもなんでもいいや。どうせ俺がへし折ってやるんだし。

「この幸せが、こんな日が、ずっと続くといいな……」
「……きっと続くよ……多分。」
「多分て。続く続く。続かないとしたら世界滅亡の日が来ることくらい。」
「おぉ……じゃあ続く。」
「そ、続くの。」

 友達以上、恋人未満な俺らの微妙な距離感。
……言っとくけど、杉谷と俺は付き合ってないからね?




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