―――――『復讐』―――――


物語は、凄惨な殺人事件から始まる。
場所は、アメリカのある街のホテル
殺されたのは、57歳の建設作業員の男
全裸でベッドに大の字に縛り付けられ局部を切り取られ、局部を切り取る為に使ったと思われるハサミを左胸に突き刺したまま、切り取られた局部を口に押し込まれ目を大きく見開いたまま死んでいる。
現場に駆けつけた捜査員も目をそむけるほどの光景であった。
それから3ヶ月の間に連続して2件、同様の殺人事件が起きる。
いずれも深夜の犯行で、被害者たちは殺害される直前に地元の娼婦を買っていた。
被害者を調べてゆくうちに、3人とも同じ街の出身者で、しかも昔遊び仲間だったことが分かる。
4人目の犠牲者が出た後、名前も知らない男から指定されたホテルの部屋に被害者たちを連れ込むだけの仕事を請け負ったのだという娼婦たちの証言から気弱な39歳の男が捜査線上に浮かぶ。
事情聴取に対し男は、「確かに事件があった日に仕事でそれぞれの町に行っていたが、娼婦たちには会ったこともないし犯行時間には宿泊先のホテルで寝ていた」と言う。
娼婦たちに男を面通しさせると、顔は良く似ているが雰囲気が全く違うと言う。
調べてゆくうちに、
男も被害者たちと同じ街の出身である事。
男の父親は海兵隊員で彼が2歳の時に派兵先で戦死し、母親はその半年後、自宅で何者かにレイプされ左胸にナイフを突き刺したままベッドの上で殺害されていて、保育施設から帰った彼と保育士が第一発見者であった事。（母親の事件は未だ解決していない）
その後彼は父方の祖父母に引き取られ育てられた事。
ハイスクール時代に傷害事件を起こしている事（気弱な彼に付きまとっていた不良グループ7人を素手で全員病院送りにしている。）
が分かる。
ハイスクール時代に起こした傷害事件の当時の目撃者によると、自分は遠くから見ていたので何を言っているか分からなかったが、最初彼は不良グループに囲まれて何か言われていて、その後不良グループの一人に殴り倒されたのだという。しかし起き上がってからの彼は、別人の様にあっと言う間に全員を倒し、何か言った後その場に倒れたのだという。まるでカンフー映画を観ているようだったという。しかし、彼は最初に殴り倒された後の事を全く覚えていなかったらしいというのだ。
あるとき男の身辺を捜査していた刑事が、「容疑者の男が全く眠らない。」と言い出す。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　・・・続く・・・