Nicotto Town



ェー海戦では

だった。
 突然二人は立ち上がり、悲しい顔でホーネットを見詰める。
「今命令が下りました――あなたを雷撃処分します」
 秋雲の言葉に、ホーネットは静かに笑った。
「そう???」
「我々はあなたを日本へ連れて行きたかったんですが、損傷が激しく、どうしようもないという事がわかりました」
 巻雲の悲しい声に、ホーネットは笑顔で言う。
「それは良かった???一応???私も合衆国海軍の空母だもの???味方と戦うくらいなら???自ら死を選ぶわ???」
 ホーネットの勇ましく儚い言葉に二人は最高の敬礼をした。
「「貴官のご冥福をお祈りします」」
 そう言って、秋雲と巻雲は光に包まれて消えた。
 直後、ホーネットの聞いた事のない演奏が聞こえた。それは、日本海軍の軍歌の一つ、鎮魂歌『海行かば』だった。たとえ敵艦であっても、最後は情けを掛ける。それが日本海軍――日本という国であった。
「なんていい曲なの???」
 ホーネットは涙を流しながらその曲に耳を傾けた。
 風に乗って来るメロディに、ホーネットは心から日本海軍に感謝した。
 そんな彼らを、最高のライバル国だと思った。<a href="http://www.vmi1.com" title="http://www.vmi1.com">http://www.vmi1.com</a>
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「あなた達に負けて???私は悔いはない???」
 ホーネットは心からそう思った。
 曲が終わり、月夜に照らされる敵駆逐艦二隻――『秋雲』『巻雲』の甲板には多くの兵が敬礼していた。それが、ホーネットにはすごく嬉しかった。
 そして???
 遠くで何かが着水した音が聞こえ、次の瞬間、月に照らされる海に数本の白い軌跡が見えた。
 それはなぜかとても遅く、スローモーションのようだった。
『死の直前は、時間がゆっくり流れる』
 そんな言葉をどこかで聞いた事がある。
 その瞬間、今までの記憶が走馬灯のように甦った。
 いつも笑っていて優しかったヨークタウン姉さん???
 軍人らしく、いつも厳しいが本当は優しいエンタープライズ姉さん???
 そんな二人の妹でいられて、本当に嬉しかった。
 少し先にはエンタープライズ姉さんがいて、遠い海の底にはヨークタウン姉さんがいる。自分ももうすぐヨークタウン姉さんと同じく海に沈む。
 思えば短い命だった。生まれてからたった一年でもう死を迎えなければならないのだから。
 もし、日本と戦う事がなければもっと長生きできただろう。でも、兵器は戦っている時にこそ輝く物。平和な時代に生まれ、何もせずにただ訓練の毎日になるのと比べれば、艦魂にとっては嬉しい限りだった。
 そして、日本という国は、本当はすばらしい国だともわかった。
 今はまったく日本の事を恨んだり憎んだりできなかった。
 戦えた事に、今は誇りを持てる。そう思った。
「でも???」
 ホーネットは静かに日本に謝った。
「まだ???戦争は終わらない???そして???まだ姉さんが残ってる???まだ戦争は終わらないのよ???」
 寂しいそうに言う。
 変えられない現実。
 戦争という悲惨な歴史。
 この戦いはまだ続く。そんな気がしてならない。
 きっとこれからも日米双方で多くの人間や艦魂達がこの海に沈むだろう。
 でも、それが戦争なのだ。
 刹那、ホーネットは一面に星が煌く夜空に小さく笑い掛けた。
「でしょ? 姉さん???」
 その瞬間、艦が大きく揺れ、ホーネットの意識は永久に途絶えた。

 ――空母『ホーネット』、他の姉妹艦とは年の離れたこの新鋭空母は、今までの空母の欠点をできる限り改良した、まさに合衆国海軍の空母技術の粋を結集させた空母であった。日本本土を空襲し、ミッドウェー海戦では無敵の日本機動部隊を壊滅させ、常にその身を前線に置き続けた。そんな『ホーネット』は激動の時代の中、僅か一年の短い生涯を終え、ソロモンの海深くに沈んで逝った――

 この海戦で 




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