ある男の独白
- カテゴリ:自作小説
- 2017/09/25 00:54:53
今僕は病院にいる。
精神の病だった。
当時のことはよく覚えてないが、どうやら仕事で過労らしかった。
入院して2ヶ月ほどで、やっと落ち着いたが、何もやる気は起きなかった。
仕事は断ろうと思えば断れたが、何かに没頭していたかったのだろう。
見て見ぬ振りをしなければいけないものが社会にはたくさんあった。
それらを忘れるためにも常に何かに取り組んでいないとだめだった。
そして、達成感に酔いしれていた。
きっともう他のことなどどうでもよかったのだろう。
仲の良かった仲間とも疎遠になった。
たまの休日はいつも寝ていた。
孤独に慣れすぎて寂しさすら感じなくなった。
だからだろう。
心にぽっかり空いた空洞に何かがはいりこんだことなど気づかなかった。
初めは声が聞こえた。
仕事、大変だね。
終わったらこっちにおいでよ。
そんな、声。
次は夢だった。
幼いころ、一緒に遊んだ友達。
彼らははやくおいでよ。と語りかけた。
それはすごく懐かしく、優しい声だった。
ご飯を食べても味を感じなくなったのもこのころだった。
お酒を飲んでも酔えなった。
本やテレビにも集中できなくなった。
そして、生きる意味を無くした。
だから、彼らのもとに行こうとした。
何もない現実より、夢でも希望が持てる方が良かったからだ。
そして、彼らの手を取って進んだ。
ぼくは自殺したらしい。よく覚えてないが。
助かって病院送りだった。
きっと彼らは冥界からの使者だったのかな。
あの頃は幸せだった。
そんな、今現在をないがしろにするような思いへの制裁だったのかもしれない。
いや、僕が今に捨てられたのかな。
これからは今を大事にしよう。
今はダメでもせめて未来は幸せだと信じよう。
おわり
>だからだろう。
>心にぽっかり空いた空洞に何かがはいりこんだことなど気づかなかった。
悲しいはずのこの表現は、すっかり私の胸に届きました。うつくしく
人とのつながりの大切さが伝わってきます。