彼女の憂鬱
- カテゴリ:自作小説
- 2017/09/25 18:34:59
高校時代の僕は何か勘違いしていた。
いい大学へ行って、一流企業へ就職することが人生の全てだと思っていた。
そう教育されていたし、大人達はみなそう言っていた。
実際、ほとんどの時間を勉強に費やした。地方の学校ではあったが、成績はトップ。
そんな敷かれたレールを進む人生に疑問はなかった。
彼女と出会ったのはそんな時だった。
東京の学校から来た彼女は天才だった。
授業は休みがちだったが、トップの座はいとも簡単に奪われた。
空いた時間はバイトに当てていたらしい。
僕は勉強していたのに…
たまたま方向が同じで、一緒に帰る機会もあった。
「君はどこの大学へ行くの?」
「私?大学には行かないよ。」
「なぜ?もったいない!」
「当たり前の人生を歩むのがそんなに楽しい?」
僕は何も言い返せない。
「私ね、もう飽きてるの。周りのみんなと同じことする毎日に。」
それは僕にとって衝撃的な言葉だった。当たり前を当たり前のように過ごし、何も疑問に思わなかった僕には。
「私、卒業したら世界を旅するんだ。そのためにバイトもしてる。」
そう言った彼女の瞳はどこか遠くを写していて、僕なんか見えてなかった。
僕はくやしかった。
きっと本物の天才というのは世界がつまらないんだろう。だからこそ奇抜なタイプが多いのかもしれない。
受験の季節、僕は地元の大学の心理学部に進みたいと考えた。周囲は大反対だったが、押し切った。
彼女が外の世界を目指すなら、僕は内なる世界を探求しようと思ったからだ。同じことをしてもつまらないと言ったのは彼女だったし。
それを聞いた彼女の瞳は初めて僕を写したように思えた。
僕は彼女に認められたような気がして嬉しかった。
そこから10年はあっという間だった。
僕は大学院に進み、臨床心理士として病院に勤務していた。精神を病んでしまった人とその家族のケアを担当している。給料は大したことなかったが、やりがいが非常にあり、充実した毎日を送っていた。
噂で聞いたが、彼女は途上国で子供たちの世話をするボランティアとして活躍しているらしい。そこでもやはり彼女は天才だった。6ヶ国語を自在に操る先生として、子供たちに語学を教えているらしい。
来月には同窓会だ。
今の僕なら胸を張って彼女に会える。
そこで伝えよう。
「僕の人生を変えてくれて、ありがとう」と。
おわり
これは体験談なの???すごくリアリティがある作品だけど
よかったら申請させてください
新作も期待してます
悩んでた方だったなあ。
もう我が道しかないなーと中学時代ぐらいには思ってた記憶。
確かになんか懐かしいかんじになりました^^
主人公と似た経験を持つ人は多いと思います。
そして、皆と違うと、弾こうとする傾向も、現実にはあります。
私は、周りの反対を押して、高校から好きな道に進ませてもらったので、
仲間にも出会え、運が良かったかも・・
この作品も、人との出会いの大切さが伝わってきます。
「私ね、もう飽きてるの。周りのみんなと同じことする毎日に。」
この台詞、まさに、私の中学時代の心境で、懐かしかったです。
影響を与えてくれる人との出会いも大事ですね
あと、それに気付くのもw