Nicotto Town



一流の流儀④(小説)

超一流のアスリートのみが到達できる領域がある。

ZONE(超集中状態)と呼ばれる領域だ。

ここでは全てが止まって見えるという…


渡辺さんの集中力は驚異だった。

今もレジ点検を行なっているが、鬼気迫るものを感じる。

それでいて周りにも気を配れるものだから本当にすごい。

どこにでもいる、今時の若者という感じだが、制服に袖を通したとたん、一気に頼れる先輩へと豹変する。

私は、仕事を夜勤の渡辺さんに引き継ぐと、着替えて店の一角にある休憩所を陣取った。

夕勤の時は、こうして渡辺さんの仕事ぶりを眺めながら、廃棄の夕食をいただくのが日課になっていた。

日付けが変わろうとしていた頃に、渡辺さんが休憩所へひょっこり顔を出した。

「ケーキ食べる?」

「ケーキですか?」

「ああ。今度クリスマス用のケーキの予約が始まるんだけど、試作品を本社が送ってくれたんだ。」

「へぇ〜。じゃあ渡辺さんも一緒に食べましょうよ!」

「そうだな…。少し落ち着いたし、ちょっと休憩するかな。」

こうして、バックヤードで、二人きりのクリスマスパーティーを開催した。

「サラダと唐揚げも用意してみた。廃棄だけど…」

「おお。なんか豪華にみえますね。」

ケーキに立てたロウソクに火をつけ、電気を消す。

「わぁ〜!なんかそれっぽい!」

「「メリークリスマス!」」

お茶で乾杯し、二人でロウソクの火を消す。

「渡辺さんは何か夢とかあるんですか?やっぱりバンドとか劇団とかやってたりするんですか?」

「そうだなぁ。いずれは自分の店を持ちたいな。収支管理や部下のマネジメントもやってみたい。」

「うん!できるよ!渡辺さんなら!」

その日、私は夜が明けるまで渡辺さんの仕事ぶりを眺めていた。

店を出た時の朝日がどこか心地よかった。

つづく

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2017/10/09 10:00
集中で神経を研ぎ澄ますことは、
周りの空気の中での自分の位置(在り方)を、掌握することなのかもしれませんね。
アバター
2017/10/09 08:38
支援でーす☆ (。・ω・。)ノ♡



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