一流の流儀⑤(小説)
- カテゴリ:自作小説
- 2017/10/09 10:59:15
信じる心は偉大である。
プラセボ効果をご存知だろうか?
効果のない偽薬だとしても、
患者が効果があると信じていれば
症状が改善するという。
人体は神秘に包まれている…
バイト最後の日、私は渡辺さんに気持ちを伝えるかどうか迷っていた。
ほぼ毎日のように顔を合わせ、苦楽を共にしてきた渡辺さんに、バイトの先輩以上の想いが芽生えていた。
シフトが終わるとバックヤードで渡辺さんに向き合う。
「渡辺さん。」
「ん?」
「私、渡辺さんのこと…」
直前で黙ってしまう。
私には本当に渡辺さんの隣にいる資格があるのだろうか?仕事の実力はおろか、人格も遠く及ばない…。仮に恋人になれたとしても、壁を感じてしまうのは何より私ではなかろうか。
「僕のこと?」
「…ずっとすごいと思ってました!」
口をついて出たのは意外な一言だった。
「渡辺さんは私の目標です。それはこれからもかわりません。必ず追いついてみせます!いや、いつか追い越します!だから…」
待っててください。その言葉は出なかった。
「そうか…。じゃあ待ってるよ。君が一流の商社マンになるまで。僕もその頃にはきっと自分の店を持っていることを約束するよ。」
「渡辺さん…」
「また廃棄をご馳走するよ。」
そう言って私達は笑いあった。
数年後…
私は久しぶりにドイツから帰国した。
今日からしばらく休暇だ。
あれから私は例の商社で寝る間も惜しんで働き、周りからも一目置かれるようになった。
渡辺さんもついに自分の店をオープンさせたらしい。
きっと忙しいだろうが、会いに行こう。
そして、また休憩所で彼の仕事ぶりを眺めていよう。
いつかのように。
おわり
とても深い考察を頂いて、作品を書いた自分が思わず唸ってしまいました笑
頂いたコメントの『一つ一つの「思い」を忘れている昨今のSNSに対する警鐘』と言う一節が
ずばりその通りで嬉しかったです。笑
仰る通り、あの作品の主人公は「いいね」を手軽な好意表現だとは思っていません。
彼女が「いいね」する言葉は彼女にとってかけがえのない物に違いないのです。
けれど、彼女は「いいね」をした言葉を発した彼の目に留まりたいわけではありません。
「ありがとう」という言葉自体、受け取ってもらえなくても良いのです。
私に向けての言葉でなくてもいい。
けれど、あなたの言葉が私にとっての生きる力になっているから。だから、
届かなくても、感謝の言葉を伝えたかったのです。
あの作品の裏のテーマは『陰と陽』です。
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私が『一流の流儀』に惹かれたのは、筆者であるあかささんが「表現したいもの」を
明確に持って書かれていたからなのかな?とコメントを頂いて感じました。
私も小説を書く時は「表現したいもの」を確かに自身の中に持ってはいるのですが、
どちらかと言うと詩に近い抽象的でファンタジックな作品が多いので、作風が全く異なる
あかささんの小説はとても新鮮なものに感じられました。
今まで自作小説のカテゴリーを見たことは殆ど無かったのですが、
思いがけない素敵な出会いを拾えた気持ちで嬉しいです。
こちらこそ、宜しくお願い致します。
ブログ広場の自作小説のカテゴリからお邪魔しました。
通しで一気読みしました。
文章も表現もシンプルで読みやすく、かつストーリーもすんなり入ってくるので
素直に楽しめました。
各話ごとに「導入」があって、それを前提に本筋に入っていく所が癖になりますね。
主人公に対して感情移入しやすく、面白い手法ですね!
思い込みだね^^;
「一流」のカウンセラーに、カウンセリングしてもらいたいな!
>プラセボ効果をご存知だろうか?
こういった表現に学びたいと思います。
そして、その節の旨意を初めに触れて、物語を展開するやり方も。
華さんの言う通り、信じる気持ちが成功につながる。
だから久しぶりに会う二人は、それぞれ成功してるはずと読者は考える。
そして、さらなる上を目指し、いつかのように。
次回作を楽しみにしてます、メモを片手に
それでは
信じる気持ちでしょうか?
自分を信じる、信じ込ませる気持ちとして、使われている感じですね。
しかし、すみません。
恋人のセリフが出るまで、主人公を男性として読んでいました^^;
慌てて読み返しました 笑
読み返すと、第1話のケーキ、女性への心配りとして読む方が自然ですねw
最初の「その男は」のセリフで、勘違いのスイッチが入ってしまったのかも。
「その男性は」だと、女性の語り「その男の人は」だと、どちらともとれるような、
そのあたりでしょうか。(細かいことをすみません^^;)
自分の視野を広げながら、自分を確立していき、相手を見つめ見守っていく。
自然で、いい関係の物語だな~と思いました。