Nicotto Town



よきにはからへ その17

父のいとこ
いかず後家山口のかっちゃんは
四〇すぎてから観念したのか
けっこうな資産家ののちぞいにはいったが
大腸を患いでさとにかえされた

かっちゃんたちのおっかさまは早くに亡くなり
山口にも奈良女子師範卒業のたいそうなのちぞいさまが
はいられたが、5人のいとちたちは彼女になつかず
しばらくの間
歩いて5分くらいな我が家で
ごはんを食べていたそうだ。
父は潔癖症の癇癪もちだが
わりと人づきあいのよい方で
やもめのかっちゃんがアメリカンファミリーの
外交員を始めたときは母ともども契約したのであった

それからわりとすぐに母がリンパ腫発症し
保険金がバックされた
林ますみじゃないけれど
きっちりもとを取った母を
「たいしたもんだ」と感心していた

かっちゃんの長兄ういっちゃんも契約したが
保険やめたとたんに胃がんがみつかり
1年ともたず亡くなった

保険はお守りとかいう民間信仰も
まったくゆえなしとは言えない実例もあるわけだ
それにしても
事情通サバイバーかっちゃんが
生きている間にいろいろ聞いておかないとね
オーラルヒストリー継承したいものです

「琵琶法師ー異人(まれびと)の視座から」
    赤坂憲雄
    日本文学 32(4,6) 日本文学協会1983





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