Nicotto Town


まったり時間。


【お話】さよならは、言わない。

刻限だ。門をくぐらなくちゃ。この先に何があるのか知らないけれど、歌があるから。どこへだって行けるさ。

もらったステキコーデ♪:21


刻限だ。

行かなければ。もう、ここにはいられない。

呼ぶ声が、ずっと聞こえていた。詩人はここにいながら、別の世界をのぞく存在なんだって、知っていただろう?

門の向こうに何があるのか、僕は知らない。

美しい世界なのか、醜い世界なのか。

でもそれは、こちらの世界だって同じだった。リュートを抱えてぼくは、歩いて回ったよ。歌いながらね。

あちらの世界でも同じだ。ぼくは歌う。

歌いながら、歩いていくだろう。

薄情だって?

そうだね。詩人はみんな、薄情なものなんだよ。

だから君は、ぼくのことなんか忘れてしまって。幸せにおなり。

大地を足で踏みしめて。顔を上げ、根を張り、君という存在の花を。咲かせるんだ。

夏の日差しにも負けず、冬の寒さにも耐えた、そのあとに、

君はきっと、美しい花を咲かせる。

それが見られないのが残念だ。ただ、それだけが。

門の先の世界が呼んでいる。もう行かなければ。

さよならは、言わないよ。

友よ。

友よ。

幸くあれ。

幸くあれ。


* * *


長く共に旅をしてきた詩人が、別の世界に帰る話。

別れがあっても、幸あれと願う心は、真実。








アバター
2023/10/04 01:23
>めーぐるさん

ありがとう(⌒∇⌒)
アバター
2023/10/01 22:43
(*´Д`)~♡

しのさんのお話、好き♪




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.