Nicotto Town



鷹介は許さない

「ぼくはみんなみたいに口をきくことはできないよ」
鷹介は闇野に厳しい視線を向ける。かつてヤミノリウスに向けていたものと同じ目だ。
「ぼくはお前がしたことを忘れないし、許さない」
"お前" と言った。
まだ子供くささが残る学生がそう呼び捨てたこの一言は、たちまち場を緊張させた。
誰もが触れることを避けていたと言える。忘れたふりをして、思い出さないようにして。闇野が大魔界の魔導士ヤミノリウスであるという事実は消えはしないのに。
「鷹介くん・・・」と亜衣子が言いかけたところ「わたしも忘れてなどいない」と闇野がかぶせた。
その声音はその場に居たすべての者に当時の記憶を呼び起こさせた。闇野ではない、ヤミノリウスが口をきいたのだと誰もが分かった。
「わたしが憎いか」




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