Nicotto Town


小説日記。


アリス。【読みきり】


――有栖川。

ありすがわ。

だから、アリス。


みんなそう呼ぶ。

だからアリス。

私はアリス。


―――ああ。

どうして私は。



――逃げてるんだ?



KEEP OUT/KEEP OUT/KEEP OUT/KEEP OUT


「―――ッ、」

 ばぎゃあっ、と今の今まで私がいた木の枝が叩き折られた。
 ぱらぱらと木の破片が舞って、私の視界が一瞬ぶれる。

――やばい、

 本能らしきもので理解した。
 でも私の脚は止まらない。
 大丈夫、今回も逃げ切れる――。

 ぱぁんっ、と灼熱の鉛球が、背を向けて逃げる私の頬を掠っていった。
 驚く暇も無い。
 休む暇も無い。

 本物の猫みたいに枝から枝に飛び移って、逃げ続ける。

 逃げなきゃいけない。

 空腹で意識が朦朧としてたって。
 疲労で脚が悲鳴をあげてたって。
 
 逃げなきゃいけない。

 それだけが私の頭の中を、ぐるぐる回っていて―――

 
 ――ぱぁんっっ


 だから、ただがむしゃらに逃げるだけの私に鉛玉は簡単に当たった。
 左の脇腹を貫いていったあの鉛球の感触を、私は今でも覚えている。


 どしゃあああっ、と派手に地面に墜落して転がった。
 痛みなんて感じなかった。
 もう起き上がる力は私に残っていなかった。
 ようやく止まる事が出来た。
 曲りなりに手にした束の間の休息に、意識だけが逃げろ警鐘を鳴らす。
 でも、身体が言う事を訊かない。

 背後から迫ってくる狩人の足音に、怯える事すら疲れてしまった。
 鎖で縛ってこのクソ寒い雪の上を引き摺られるんだろうか。
 でも、もうどうでもいい。
 私は負けたんだ。
 狩人との追いかけっこに。
 ―――自分に。
 
 だが。狩人は。

 狩人はうつ伏せに倒れた私の腹に両手を回し、"お姫様抱っこ"というやつで私を抱き上げたのだ。
 びくりと全身が震えた。
 私は今度こそ驚いて閉じかけていた瞼を開けた。

 …優しそうな、それでいて子供みたいな顔をした人間の雄だった。
 恐らく"童顔"っていうやつで、背が割りと高いくせ子供っぽく見えた。

 狩人は私に何か言っているようだった。
 でも、私の意識の方が先に途切れた。



 ▼




 ―――深い闇の底らしきところから目を覚ますと、私はそこが雪山で無いことに気がついた。
 急いで起き上がるのももどかしく、転げ落ちるようにベッドから床に四つ足で着地した。
 
 狭くて温かい室内。
 簡素な創りをした丸太小屋らしかった。
 木枠がはめ込まれた窓の外は、猛吹雪だった。
 暖炉では炎が赤々と燃え、揺り椅子に座って分厚い本を読んでいた狩人が、私の立てた物音に顔を上げた。

「おはよう。よく眠れた?」

 ふわりと浮かんだ優しげな笑み。
 それが自分に向けられていることに、私はなかなか気づけなかった。

 ずきりと看病されたらしい傷口が痛んだ。

 __私に向けられるのは、奇異と金に餓えた狂気の視線だけ。


「………は?」

 自分の発した声は酷く掠れて、音にさえならなかった。
 長い時間声を発さなかったからだろう。

 ――何してる。早く逃げろ。

 頭の中でもう一人の自分が言う。
 私は凍りついたように動けなかった。

 ――こいつは、一体何をしてるんだ?

 __ただの【獲物】である、私に


「スープ作ったんだけどさ、ちょっと多く作りすぎちゃって――勿論君もいるよね?」


 間を取り繕うように狩人が苦笑しながら立ち上がった。
 毛布に包まったままの私に手を差し伸べて、優しくそう言った。


 __私の中で、何かがショートした。



 気がついたら、狩人が自分の足元に倒れていた。
 赤黒い液体をあちこちに飛び散らせ、自らもそこに溺れながら。

「…………ぁ…?」


 暖炉の火は消えていた。
 ちゃちな木のドアは開け放たれ、窓ガラスが粉々になって床に散らばっていた。


 ――逃げなきゃ。

 何故かそう思った。
 本能みたいなもので、ただそう思った。

 私は駆け出した。
 灰色狼の脚で。


 ――逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ逃げなきゃ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ、


 誰から?

 何から?


 解らない。



 でも私は、逃げなきゃいけないんだ。

 傷の痛みなんて感じない。



 真っ白な猫の耳が、茶色い狐の尻尾が絶対零度の風を切る。
 左の熊の手が真っ赤に染まった液体を真っ白な雪に滴らせる。
 灰色狼の脚が、真っ白な雪に足跡をつける。

 喉の奥から迸る。
 意味を成さない絶叫が。


「―――ゎあああああああああああああああああああああああああああああああああ―――ッッッッッ!!!!!!!?!?!!!!」



 視界が霞んだ。
 熱い雫が、頬を伝った。






KEEP OUT/KEEO OUT/KEEP OUT/KEEP OUT



食後にすみませんホント(


うん。アリス好きだ。(

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2012/03/27 08:42
アリスかわぇえ(

えっとねぇ、糾姉が好きな服装でいいよ^p^
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2012/03/26 23:46
アリスさんおいしく頂きました(
うおふおふふおふ^p^((

「有栖川」っていう名前もすごく好きだ、
何かすごく馴染めるというか…私だけなんだろうけれどw

センスに脱帽というか平伏す(
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2012/03/26 22:13
久しぶりのシキロさんの小説ッ!!!!!
私も、アリスを題材にした小説を書いたことがあったのですがやっぱりシキロさんの小説見て続きを描く気力を失いましt(

シキロさんの書く戦闘シーンは迫力、スピードが凄いです!!
やばいです!!
もう尊敬しすぎてヤバイですめっちゃリスペクトです!!!

そして読解力のない私にはアリスがどうなったのかわからないです(´・ω・`)←
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2012/03/26 20:20
アリスちゃん最高ですよほんと。
和露ちゃんも髪の毛設定とか最高ですけどね!
つーか飧糾さんの作る女の子はどれも最高ですねはふはふ
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2012/03/26 20:19
ぉおおおおおおおおお(
アリスさんっ!!!!!!!!!!((←

神過ぎてのーこめ。
あえて黙っておこう。
私も奏夢さんの書こうかな(



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