Nicotto Town


小説日記。


企画/短編 3

# - ユダの木に跪け



 嗚呼、世界は無情だ。
 1秒ごとに人が死ぬし、毎日どこかで戦争が起こってる。
 でもそれを神さまは許すんだ。
 どうしてだろう?

 神さまなんて居ないからさ!

 助けて欲しいかって聞くと、みんな頷く。
 だって僕は神さまだからね。

 さっきと言ってることが違う?

 そうだね。
 ごめん、言い方を変えよう。

 僕が神さまなんだ。

 ああ、止めてよ!
 噛み付くのは駄目だ。
 犬は嫌いなんだよ。
 鳥も嫌いだし、海豚も嫌いだ。
 ……最後のは余計だったかな。

 ところで君は、世界はどうやって回ってると思う?
 どうして世界は丸いと思う?
 もちろん、僕が決めたからさ。
 僕は神さまだからね。
 僕が上って言った場所が上になるし、僕が下って言ったらそこは地面になるんだ。
 君はどうして天井に立ってるの?

 ごめん!嘘。

 信じたでしょ?
 ああダメダメ、そんな頼み方じゃ嫌だよ。
 でも僕は神さまだ。
 それだけは変わらない事実だし、これからもずっと変わりない。
 何故なら僕がそう決めたからね。

 ねえ、そろそろ真面目にお願いしてみたら?
 それとも僕が教えてあげようか。
 こう、四つん這いで地面にキスをするんだ。
 そうそう、とっても素敵だ。
 超似合ってる。
 才能あるんじゃない?

 ねえ、僕がその気になれば君なんてすぐ殺せちゃうんだよ?
 生かしてる意味もないしね、君ってえらくつまらない。
 退屈だ。
 たいくつ、退屈、タイクツ、怠屈。

 君が不老不死だろうと、
 君が概念上の不定形な存在だろうと、
 僕は殺せる。
 その力を持ってる。

 信じられない?
 なら試してみる?

 すぐ生き返らせてやるよ。




「やあ、最近調子どう?」

 腰掛けた瓦礫の山の天辺から、罪を重ねる少女を見下ろす。
 うつ伏せの少女は起き上がろうともしないので、仕方がないから傍に降りてしゃがみ込む。
 蒼白な横顔には血の気がない。
 焦げた髪の毛を鷲掴み、顔を上げさせる。

「あ、」

 なんだ、死んでる。
 通りで喋らないと思った。
 でもこの子なら話しかけても無視してたかもしれない。
 だったら死んでても一緒かな、でもそれじゃあつまらない。
 だから、なんか喋ってよ。

「やあ、最近調子どう?」

 もう一度同じことを繰り返す。
 すると少女は息を吹き返して俺を見る。
 見開いた緑色の目が、ゾンビみたいに濁ってる。

「なんか喋れよ」

 立ち上がる。
 無造作に少女をコンクリートに投げ捨てた。
 すると潰れたカエルみたいな声を上げてビクビクと痙攣した。頭でも打ったかな。
 鬱陶しいので蹴り飛ばす。
 それで静かになった。

「いつまで続けるの?」
 
 問いかける。
 答えない少女。
 俺のあげた力を無駄にする脳たりん。
 学習しない馬鹿。
 生産性のないゴミ。

「あっそう。そうじゃないとね」

 だからこそ、僕の玩具だ。


 人は僕を鬼だとか悪魔だとか言う。
 酷いよねぇ。同じ人間なのに。
 でも人間じゃない奴も居る。
 そいつらも同じことを言う。
 お前らってなんで同じことしか言えないんだ?
 
 やあ、君たちはラクなもんだろ?
 人間は嫌いだとか、絶対許さないだとか、一生恨んでやるだとか言っとけば、可哀想にって同情してもらえるんだから。
 あはは、それ最高だ。

 俺は植物だろうが捨て猫だろうが道端の石ころだろうが関係なく同情なんて一切しないけど、助けて欲しいって言うなら助けてあげることにしてる。
 だって、そのほうが面白いだろ?
 一度は俺に感謝してくれるし、自分は特別なんだって優越感に浸ってるのを遠くから眺めてニヤニヤ出来る。
 一回やってみなよ。超面白いからさ。
 それで上手く行かなくなると、途端に俺を罵って、鬼だとか悪魔だとか言う。
 自業自得だろ。
 助けてって言ったのはお前だ。
 これだからやめられない。
 悲しくて流す涙の味がしょっぱいことをお前らはよく知ってるだろ?
 でもそれは僕にとっては甘いんだ。 
 他人の不幸は蜜の味って昔からよく言うじゃん。

 でも僕は気に入った子しか助けない。
 何故なら神さまじゃないからだ。

 神に等しい力を持った人間

 ねえ知ってる?ヒトって〝愛〟を失うと死んじゃうらしいよ。
 だからあの子はいつも死んだ目をしてる。
 生きてるけど死んでる。
 濁った緑色の目は片方しか見えないし、音も聞こえない。
 ああ!だから喋らなかったのか。気付かなかったよ。
 今度耳は治しておかなきゃ。
 なんで聞こえなくなったんだろう?
 思い出した、僕が蹴飛ばしたからだ。

 人間って壊れやすいよね。
 外も中身も。
 だから厄介だ。
 だから滑稽だ。
 玩具は長く遊べなきゃ意味がない。

 言っとくけどどこに居たってどれだけ離れてたって次元が違ったって宇宙に居たって僕が消えろって思えば君は死ぬし、手なんか汚れない。
 一ミリも悲しくないし誰もお前の死に気付かない。
 でもただ殺すだけじゃつまらない。
 いたぶったら良い声で鳴いてよね。
 まずはその首と身体にサヨナラ言ってよ。
 え?それじゃあ死んじゃう?
 参ったな。どうすれば良い?

 愛に飢えて、
 絶望に堕ちて、
 希望に足掻いて、
 悪魔は囁く。

 俺は神さまだ。
 ヒトの運命を自由に決められる。
 過去と現在、未来も全部。
 もう過ぎたことをいじくって、お前をこの地球上から消し去ることなんて歯磨きしながらだって出来る。
 でも歯磨きしながら存在を消されたくないだろ?
 だったら上手におねだりしろよ。
 そしたら少しは考えてやるかもよ?



*****

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碧の演説
生産性のないゴミっていう言葉を使いたかっただけ。


ツイッター交流企画【人畜無街】様より

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